Merriam-Webster's Collegiate Dictionary, 11th Edition (Merriam-Webster, 2009)
語源が充実していると好評な英英辞書。
語義を古いほうから並べる歴史原則を採用している(ふつうの辞書は現在つかわれている意味から並べる頻度順原則による)。
急いで断っておかなければならないけれど、この辞書は別に語源専門の辞書ではない。本来は英語話者向けの(大学レベルの)辞書だ。ただ、語源欄が他の辞書に比べてかなり詳しく、語義を古いほうから順に並べているところが、際立つだけだ。
姉妹辞書に Merriam-Webster's Collegiate Thesaurus, Second Edition というのがあり、Kindle 用のベスト・シソーラスという評判がある。いずれも、Kindle 用途をよく考えた設計になっている。
具体例として 'nice' という単語を引いてみる。すると次のような記述が表示される(iOS 版)。これで 'nice' の記述はすべてだ。
一見してすぐわかるのは、直ちに語源欄に 'ME, foolish, wanton' とあることだ。「愚かな」「理不尽な」とは、現代人が 'nice' から思い浮かべるニュアンスとはかけ離れているかもしれないけれど、元々、ラテン語の「無知」 'nescius' から来ていると知れば、そうかと納得せざるを得ない。
ただし、英文でその意味で現れることは今はなく、現れるとしたら2番の語義からで、'particular' 「好みのうるさい」からだ。
現代でおなじみの「ナイス」な意味はやっと5番あたりから現れる。
こういう意味の変遷をみると、今度は、元の意味から180度方向を変えたように思われる変化がなぜ生じたのか、と新たな疑問がわくくらいだ。
Kindle 用に特化した設計がなされており、画面は見やすく、もちろん、活用した形のまま見出し語に行き着く。Voyage や Paperwhite などのポップアップ画面でも見やすい。
Kindle リーダと iOS 版(iPad など)で辞書の機能が少し違うことに気づいた。結論からいうと、iOS 版のほうが使いやすい。単語を長押しした時にポップアップする辞書画面の右上に 'Full Definition' というリンクがあり、それをタッチすると辞書本体を見ることができるのだが、これが Kindle リーダではできない。Kindle のソフトウェア仕様に由来することだろうから、将来はぜひ、Kindle リーダの辞書画面の機能を拡充してもらいたい。