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DNA修復を細胞が行う3つの仕組み


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 ノーベル化学賞(2015)がスウェーデンのリンダール博士ら3名に贈られると決まった(2015年10月7日)。「DNA修復メカニズム」を解明した功績による。スウェーデン王立科学アカデミーのプレス・リリースは次のように要約している。

The Nobel Prize in Chemistry 2015 is awarded to Tomas Lindahl, Paul Modrich and Aziz Sancar for having mapped, at a molecular level, how cells repair damaged DNA and safeguard the genetic information. Their work has provided fundamental knowledge of how a living cell functions and is, for instance, used for the development of new cancer treatments.

 つまり、壊れたDNAを修復するメカニズムが生きた細胞にあること。その3種類のメカニズムを3人の科学者が明らかにしたこと。壊れたまま放っておけばガンになったりするから、その修復メカニズムはガン治療の重要な基礎になること。

 この3つのメカニズム(塩基除去修復・ヌクレオチド除去修復・ミスマッチ修復)は「2015年のノーベル化学賞、DNA修復機構の発見に対して」という記事に分かりやすくまとめられている。その記事を見る前にDNA構造の次の図を眺めておくとよくわかる。A, T と G, C のペアの構造が図解されている(A=アデニン、T=シミン、G=グアニン、C=シトシンのそれぞれ塩基)。

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 このノーベル化学賞の意義についてドイツZDF放送の報道が分かりやすい(2015年10月7日)。"Nobelpreis geht an Erbgutforscher" (ZDF, 07.10.2015)〔以下のZDF放送の内容はNHK BS1の10月8日の放送での岩間智子の通訳による。〕

DNAは命の土台です。数百万もの細胞の中に遺伝情報があり、私たちの体が機能するよう働いています。螺旋状のDNAは安定していると長い間考えられていましたが、そうではありませんでした。環境からの影響、有害物質、老化の過程などで常に傷ついているのです。この認識は革命的でした。

 フォン・カレ(Prof. Christof von Kalle)国立腫瘍疾患センター教授の話 ――〈3人の受賞者が示したのは、分子は一定の規則にしたがって壊れ、細胞のシステム全体によって維持され修復されているということです。この分野での考え方を一新することにつながりました。なぜそうなるのか、そのメカニズムの研究が始まったからです。〉

 ZDFの解説。

細胞が多くの障害になすすべもなくさらされているのではないことを研究者たちは発見しました。細胞には修復のメカニズムが備わっており、元の秩序を回復することができます。修復がうまく行かないこともあります。その場合、ガンのような病気が発生します。

 再びフォン・カレ教授の話――〈DNAの変化が非常に多くの種類の病気との関連、例えばガンに対する患者の免疫の反応にとって、ものすごく重要であることが分かりました。この認識により、用いることのできる治療方法がさらに増え、患者にとって有益となるよう期待しています。〉

 ZDFの解説。

ドイツでは毎日数千人のガン患者の遺伝子が調べられています。目標はできるだけピンポイントで効く薬を開発することです。今回の3人の受賞者の研究なしに現在のガンの医学は考えられません。

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 DNAとガンに関連する参考図書がいろいろ出ている。アマゾンでの評価が高く手に入りやすいものを下に並べておきます。