西ジャワのピュアな伝統音楽
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Sean Williams, The Sound of the Ancestral Ship: Highland Music of West Java (Oxford UP USA, 2001)
西ジャワのピュアな伝統音楽を収めた CD。
といっても、市販のオーディオ CD ではなくて、学術調査研究の録音資料を収めたもので、民族音楽の学術書に付属する。
が、これがこのうえなくすばらしい。いったんこの音楽に波長が合えば、その世界に埋没することができるくらい奥深い。
基本のスタイルは tembang Sunda (トゥンバン・スンダ)と呼ばれるアンサンブルで、声とツィター様の楽器(kacapi カチャピ)と竹笛(suling スリン)から成る。この三者の組合せは信じられないくらい繊細なアンサンブルで、それぞれにデリカシーのきわみのようなパフォーマンスを繰広げる。
歌にリズムの骨格を与えるのがカチャピーだとすると、その上空でまるで天舞を踊るように霊妙なあそびをし続けるのがスリンで、この六穴の竹笛の音がたまらない。
この CD ではほぼ Ade Suandi という人が演奏している。このスリンの音色を聞くためだけでもこの本を手に入れる価値があるくらいだ。
また、有名な歌手 Euis Komariah の無伴奏歌唱という珍しい絶品も収められている。
録音は 1987-88 年。
収録曲――
- Polos
- Lagu Rajah / Jipang Lontang
- Narangtang / Papatet / Pangapungan / Lembur Singkur
- Narangtang / Jemplang Panganten / Jemplang Cidadap / Jemplang Pamirig / Kembang Bungur / Reumbeuy Bandung
- Bayubud / Liwung / Kembang Bungur
- Udan Mas / Kapati-pati / Asmarandana Ros / Peuting Panglamunan
- Gunung Guntur; Palwa / Catrik
- Kingkilaban
参加アーティスト――
- Euis Komariah (vo)
- Asep Kosasih (vo)
- Tarman (kacapi)
- Ade Suandi (suling)
- Nana Suhana (rincik)
- Dadang Suleiman (vo)
- Tintin Suparyani (vo)
- Rukruk Rukmana (kacapi)
- Teti Affienti (vo)
- Apung Wiratmadja (vo)
- A. Tjitjah (vo)
- Tatang Subari (suling)
- Adang Dachlan (rincik)
- Enah Sukaenah (vo)
- Dede (rebab)
- Encep (rincik)
- Pepen S. (rincik)
- Neneng Dinar Suminar (vo)
- Gan-gan Garmana (kacapi)
- Iwan S. (suling)
- Kun-kun (rincik)
評価―― ★★★☆
ベスト・トラックは 'Polos'。
なお、著者は2002年春から夏にかけて来日し、神戸商大で民族音楽学を教えた。本務校は米国ワシントン州の The Evergreen State College。
インドネシア音楽に関する世界的権威として知られるが、もう一つの研究対象はアイルランドの無伴奏歌唱。
この本は版元で絶版のようだが、古書で購入する場合は、附属CDの有無を確認した方が安全だろう。
*1:評価は五つ星を最高とする尺度によっており、星の数による意味は、「★ 良い点をさがすのが困難」 「★★ かなり良い」 「★★★ 第一級(年間ベスト・アルバム・クラス)」 「★★★★ 群を抜いてすばらしい、すごい、数年に一枚出るか出ないかのクラス」 「★★★★★ 大傑作、不朽の名盤、その分野の古典と呼ばれるに値する」です。つまり、通常、「最高」と呼ばれるようなものは三つ星です。