ジョージ・ソーンダーズのX-Ray附きの短篇 Fox 8
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George Saunders, Fox 8: A Story (Kindle Single) (Random House, 2013)
結論からいえば、あの名作『ウォーターシップ・ダウンのウサギたち』のキツネ版だ。本作はおそらく翻訳されないだろう。大変に変てこな言語で書かれているから。
主人公のキツネ Fox 8 (彼の属するキツネ共同体では仲間には番号を附ける)は人間(本作では Yuman)の言葉を覚えて、不完全ながらも人間の言葉(見たところは「表音式つづり字」phonetic spelling に近い)で語るのだ。本書全体は、ある人間に宛てた彼の手紙だ。
この手紙で彼は何を訴えようとしたか。平和に暮らしていた彼らの森にある日、人間たちがやってきて森をなくしショッピング・モールを作ってしまう。食べる物をなくし悲惨な運命に陥った彼がとった行動とは。彼の仲間を想う気持ち。それらが、「見事な」言葉で綴られる。例えば森だったところにできた広大なスペースを見て彼は友に「この場所は何だ?」と訊く。
He woslike: Par King.
I woslike: What is it for?
ご覧のように英語に近いけれど、かなり違う面もある。ずうっとこの言葉を聞いているうちに、だんだんとキツネの内面に同化してゆくような感じがしてくる。
また、物語にぴったり合った挿絵もすばらしい。これは Chelsea Cardinal による。