論で割り切れないからこそ物語を書く
[スポンサーリンク]
「ユリイカ」 2013年4月号(青土社)
特集=荻原規子 『空色勾玉』『西の善き魔女』、そして『RDG レッドデータガール』・・・夢見る力の無窮
詩の雑誌だけど、散文を特集するにはそれだけのわけがあるのだろう。
急いでいっておくと、第18回中原中也賞をとった細田傳造『谷間の百合』からの抜粋は新鮮な詩のことばの驚きに満ちている。69歳の第一詩集とは思えない。細田傳造という詩人のことばのみずみずしさには圧倒される。
日本の神話からもハイファンタジーが紡げることを実証してみせた荻原規子の初の現代を舞台にしたファンタジー『RDG レッドデータガール』6巻が完結したこと、またアニメ化されたこと、デビュー25年を記念して特集はあまれた。仕掛け人は誰なんだろう。飯田一史あたりかな。
特集の最初は鼎談。あまりしゃべらない荻原規子と鋭い洞察をまじえる上橋菜穂子、それにややミーハーよりの佐藤多佳子。この三人は上橋菜穂子の『天と地の守り人』文庫版巻末でも鼎談している。「物語を紡ぐ女神」の題がついているけれど、これは上橋の発言
私ずっと感じてるんだけど、荻原さんの物語の中にはいつも女神がいるよね。
に発する。さらに絶好調の上橋はこうもいう。
いまふっと思いついたんだけど、男性中心の宗教って神様を鎮める方向に回るけど、女って呼び出す気がする。巫女も呼び出す側だし、男の方は秩序ある方向に戻したがって、見なかったことにしてふたをしようとするような。
つぎは、ひこ・田中の「日本の児童文学にとっての荻原規子の位置」。日本において児童文学やファンタジーに関心のある人は一度は読んでおいて損のない論文だ。
この調子で読みどころ満載。