詩からエアへ
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アイルランド語伝統歌とスロー・エアとの関係について某所で書いたことをまとめておきます。
音楽家にとって音色は基本のことですが、そこからスタートして考えます。
「音色」の語の代わりに「響き」(Klang) をオーボエ奏者の渡辺克也さんは提唱。アイルランド語伝統歌の場合は音のみの考慮では不足で、まず詩の構造を考え、そこから息継ぎの場所を詩全体について決め、それでやっと鼻音とか装飾音とか実際の音の検討が可能になる。各連ごとに対処が変わる。
つまり、<(発音体から)必要最小の力でうまく効率よく最大限の振動を引き出す訓練、これこそがわれわれ演奏家にとって、一番大切な、基本中の基本練習です>(渡辺克也さん)の前に、アイルランド語伝統歌の場合は、詩として声に出せなければ始まらない。声に出せれば「響き」への道は開かれる。
そして、この手続きを経た上で、アイルランド語伝統歌をエアとして演奏する際の「響き」の検討が可能になる。そのようなアプローチをとるスロー・エアのワークショップもある。
詩をまず朗誦してから(=<言葉の音楽>を味わってから)唄うことを実演してくれるビデオ: 歌はラフタリーRafteryの名歌'Úna Ní Chatháin', 歌い手は現存する最高のシャン・ノース男性歌手 Éamon Ó Donnchadha.
このビデオを見ると、歌い手はまず詩を自分の中に入れてから、唄うのだと判ります。原歌を頭に入れてエアとして演奏すると、その歌を知っている人にも違和感なく聞こえるでしょう。多くは有名な歌なので歌詞を覚えている人は珍しくありません。元の言葉の途中でフレーズを切ったりといったことはできれば避けたほうがいいと思います。
ちなみに、このビデオは NPU (Na Píobairí Uillean) のビデオ・アーカイヴにあるものです。ここにはさまざまの演唱が収められています。