Tigh Mhíchíl

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こころざし気高しシーリア


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シャン・ノース歌唱のアルバムの場合、新譜は出てもせいぜい年に数点程度だ。大抵のアルバムはどこかに「色気」があって、マス・マーケットを多少なりとも意識してる。例えば、部分的に(薄い)伴奏を附けたり、ポップな、またはコナマラ・カントリーぽい曲を入れてみたり。よくあるのは、(パーカッションを入れるなどして)リズムを強調する仕掛けだ。だけど、本来は、シャン・ノースの歌のリズムは、詩の韻律が内在的に作り出す。それ以外の、ダンス曲におけるようなリズムは不要である。

シーリア・ニアールタのアルバム*1は大抵のアルバムとは違う。ここにあるのは、シャン・ノースのレパートリーのみで、完全に無伴奏の直球勝負である。本来のシャン・ノースのアルバムの作りをしてる。リスナーへの唯一のサービスと思えるのは、リリス・オリーレのアイルランド語のライナー・ノーツに対し英文要約をほんの少し附けている点だ。

余分な要素が一切ない。これはシーリアさんが選んだ結果だろう。そのこころざしの高さが聴く者にも伝わる。まっすぐな思いが類稀な歌唱の高みとともに伝わる。

恐らくシャン・ノースの伝統を、(異国の地で)深く愛し案じるがゆえの、崇高な決断だったのだろう。しかも、従来のシャン・ノースのアルバムにもめったに入らなかった、しかし本来の伝統歌の重要なレパートリーである聖歌まで唄っている。現代にこのようなアルバムが生まれたことは奇蹟のように思える。



仰げばみ空に きらめく明星(あかぼし)
よるひるさやかに 輝きわたれり


喜びたたえよ 主イェスは生れぬ*2


*1:Celia Ní Fátharta

*2:<まきびと>