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今年中に30枚 (27) Ray Charles: Live


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  • Ray Charles: Live (Atlantic 81732-2, 1958, 1959/1987)

 有名なニューポート・ジャズ・フェスティヴァル(1958年7月5日)での録音10曲と、その翌年五月アトランタはハーンドン・スタジアムでの録音6曲とを収めたコンピレーション・アルバム。前者はヴァン・モリスンがレイならこれが「絶対」と言っていた部分にあたる。*1
 これほどシャウトしているレイ・チャールズが聴ける盤は珍しいのではないか。特にトラック 6、7、8 の三曲におけるレイのヴォーカルは、ブルーズやゴスペルの「濃い」ものが好きなファンなら、背筋に電撃が走ると思う。音質は必ずしも最高とはいえないが、レイのヴォーカルのど迫力は伝わってくる。
 アトランタでの録音ではトラック 14 が面白い。
 ニューポートのほうは、レイが聴衆にはまだ殆ど知られていなかった新人時代のもの。聴衆は「クール」なジャズを期待しており、次の出番のスタン・ケントンを今か今かと待っている状態。そこへ、このレイの延々と続く「ホット」な音楽。さぞ場違いだったろうと思うが、そんなことは吹き飛ばすくらいの凄みのあるヴォーカルである。ひょっとしたら、ヴァン・モリスンのヴォーカル・スタイルの原点はこの三曲、いや、トラック 6 ではないか。
 バンド編成はこの頃はセプテット(七重奏団)で、のちのビッグ・バンドとはかなりサウンドが違う。しかも、アルト・サックスはピアノのレイ・チャールズの兼務である。
 1959年の終わり頃にレイは ABC-Paramount レーベルと契約を結び、音楽的にもかなり変化してゆくことになる。もっとも、レイの音楽家としての本質は変わらないのだが、聴衆の第一印象は随分変わったはずだ。オーケストレーションが大々的に施され、聞きやすくなってゆく。
 それ以降は、現代の聴衆にはおなじみのレイ・チャールズのスタイルになってゆくが、その前の、野性味たっぷりで、ブルーズやゴスペルやソウルのシャウトを伴うレイのスタイルが聞きたければ、この盤は一聴の価値がある。人によってはこれぞレイ・チャールズの真の魅力だという人もあろう。おそらく、ヴァン・モリスンはそういう立場だ。私はといえば、このヴォーカルに、あとピアノがきちんと録音された盤があれば、それが理想の盤である。本コンピレーションでは残念ながらレイの弾くピアノやエレピはややオフ気味である。
 ヴァン・モリスンに導かれてのレイの旅はここまでで、あとは自分で探してゆくしかない。輸入盤が来年以降どれくらい自由に入手できるか分からないが、ま、ぼちぼちいこか。

*1:そのニューポートの部分だけをフランスでリマスターした盤も出ている。ヴァンが言及しているのはその盤のことかもしれない。