Seven Ages
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- Seven Ages: The Story of the Irish State (RTE, 2002)
RTE が放送したアイルランド現代史の番組(2000年)を収めた DVD 2枚組(全6時間半)。オール・リージョン(日本の機器でも再生可能)。
1921年から90年代までを扱い、歴史の証人たちへのインタヴュー多数を含む。アーカイヴ・フィルムには珍しいものも多い。
音楽にふれる場面も少しはあるが、中心は政治経済および宗教の歴史。従って、政治家や経済学者、聖職者や歴史家、またジャーナリストへのインタヴューが多い。といっても、話は退屈ではなく、今だからこそ語れるという、歴史の生きた証言になっており、もしその方面に関心があれば興味深いだろう。
何より、同時代の人たちの語りから、時代の雰囲気が立ちのぼるように感じられる瞬間が何度もあるのがよい。言語は殆ど英語。コナマラの女性で苦労して英語をしゃべる人も出てはくるが。音楽は Bill Whelan で、ちょうど、かつて 《Mise Eire》 でショーン・オ・リアダが果たした役割を現代において務めていることになる。中々いい音楽を書いている。
全体を見終わると、複雑な感慨に捉われる。特に、第七代大統領メアリ・ロビンスン(在職 1990-97、労働党)の「我々自身のアイルランド史の感覚こそが現代世界の辺境におかれた人々との共感につながるであろう」という主旨の示唆は深い印象を残す。
7つの番組は次の通り。
- The Birth of the New Irish State
- Depression and the Rise of Fianna Fail to Power
- The Forties Decade of Neutrality and Censorship
- The Fifties The Make or Break Decade
- The Modernisation of Ireland
- The Seventies A Decade of Terror, Tension and Transformation
- Haughey and FitzGerald Great Adversaries of the Eighties
この番組を見るうえでは、アイルランド現代史の基本知識がたぶん必要。人々がよく知っていることについては新聞の見出しなどがちらっと写るだけで全く解説されないからである。最低でも、歴代の首相や大統領の名前については把握しておかねば、政治史の軸がどこにあるのか分からなくなる。
特に次の首相については何度も何度も出てくるので、ここにメモしておく。なお、アイルランドの首相に言及する時は必ず taoiseach (ティーシャハ、ティーシャック)というアイルランド語の言葉が使われる。この言葉は英語の prime minister とは語感が違い、かしら(chief)や族長(chieftain)といったニュアンスに近い、いにしえの響きを保持している。各首相のあとの括弧内の年代は在職期間。
- Eamon de Valera (1937-48, 1951-54, 1957-59)
- Sean Lemass (1959-66)
- Jack Lynch (1966-73, 1977-79)
- Liam Cosgrave (1973-77)
- Charles J. Haughey (1979-81, 1982, 1987-92)
- Garret FitzGerald (1981-82, 1982-87)
所属政党は Fine Gael の Cosgrave と FitzGerald とを除けば、すべて Fianna Fáil。初代首相からの詳しい表は こちら に、初代大統領からの詳しい表は こちら にある。