今年中に30枚 (21) Barrelhouse Chuck: Prescription for the Blues
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シカゴのブルーズ・ピアノのバレルハウス・チャック(Chuck Goering、1958年生まれ)の2002年のアルバム。シカゴのブルーズ・ピアノの専門レーベル Sirens からのリリース。
Barrelhouse Chuck: 《Prescription for the Blues》
(Sirens SR-5004, 2002)
昨日とりあげたドウェーン・メースンと同じピアノ(Baldwin SD-10 Concert Grand)で、録音スタジオもエンジニアも同じ。だけど、本アルバムは基本的にチャックのピアノ弾き語りで、ドラムズなどは入っていないからピアノの音がより鮮明に聞こえる。チャックのほうが伸び伸び弾いているようだ。
3曲で Erwin Helfer がピアノで共演をしているが、中でもトラック6のタイトル曲 <Prescription for the Blues> は雰囲気が抜群によい。チャックの歌もすばらしい。
チャックは Leroy Carr、Little Brother Montgomery、Sunnyland Slim らの先人に敬意を抱いているとされている。確かに、音楽的には非常に伝統的な響きがする。
しかし、かしこまった演奏かというと全然そんなことはなく、ソウルあふれる歌に見合うような自由闊達な雰囲気である。
1曲だけ、トラック14でオルガン(Farfisa)も弾いているが、音色や奏法が今日では聞かれないようなふるーい感じである。
チャックのオリジナル <Yamato Stomp> という曲はすばらしいが、この題からして日本に関係あるのだろうか。
チャックは生後、孤児となってオハイオで養い親に育てられたため、生みの親のことは不詳だけれども、チェロキー・インディアンの血が半分混じっているという。9歳の時、マディ・ウォーターズなどのブルーズを聞き始め、ドラムをたたきだした。その後、一家はフロリダに引越し、そこで Jim Mckaba のピアノや Little Joe Berson のハーモニカを聞いてぶっとんだという。チャックが友人と結成したバンド The Red Rooster Band はマディの追っかけをしていたが、とうとうマディはチャックに前座をつとめさせた。
チャックは1979年にシカゴへ行き、あこがれの Little Brother Montgomery、Sunnyland Slim、Blind John Davis、Pinetop Perkins らに会って彼らから音楽を学び、最終的には世話をするようになって家族同様になった。
これまでに50以上の録音を行っているが、おそらく本作が初のソロ・アルバム。今やシカゴのブルーズ・ピアノの伝統をになう重要なピアニストである。文句なく推薦できる。