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Joanie Madden: A Whistle on the Wind


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 きょうはジョーニー・マッデン(フルート、ホィッスル)の1994年のアルバム。

 Joanie Madden: 《A Whistle on the Wind》
  (Green Linnet GLCD 1142, 1994)

 このアルバムについて書くのは難しい。
 ジョーニーは技巧的にはおそらく完璧なのだろうと思う。だけど、たぶん共同プロデューサーでピアノやギターを担当するジョーニーの友人ゲーブリエル・ドノヒューのせいで、このアルバムの音楽の性格がよく分からなくなっている。
 せっかくいい感じで吹いているところにゲーブのピアノが入ると雰囲気ががらりと変わってしまうのだ。ぼくの感覚では、ゲーブのピアノはアイルランド伝統音楽には合わない。リズムのセンスが微妙に違うし、音が派手すぎる。だいいち、ゲーブのイディオムはまるで違う世界のもので、噛合っていない(ギターのほうはそれほど違和感はないが)。

 だから、たとえばトラック6 <Hyne's March/Johnny Harling's/The Lasses of Ballintra>のように、ジョーニーとジョニー・マクドナ(ボーンズ)の二人だけでやってると、演奏はすこぶるご機嫌である。
 ジョーニー・マッデンと聞くとだれでもあのチェリッシュ・ザ・レーディーズの名を思い浮かべる。ジョーニーのキャリアの中ではこのアルバムはその名に恥じぬよい経験だったのだろうか。

 ただし、よい曲ももちろん収められている。フルートによるリール(トラック11)やホィッスル向きのリールとして作曲されたという曲を含むトラック12などは、ジョーンの演奏を引き立てる編曲でなかなかよい。ベスト・トラックはカロランを編曲したというトラック10 <Blind Mary>。ラストのリアム・クランシーによるラフトゥリーの詩の英訳の朗読はすばらしい。終わりよければ……。