Christy Moore: Graffiti Tongue
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冒頭のギター・ストロークを聞いただけでパワーを感じる、クリスティ・ムア(1945- )の1996年のアルバム。
Christy Moore: 《Graffiti Tongue》 (Grapevine GRACD 215, 1996)
しばしばクリスティは自分のギターの腕について卑下しているが、どうしてどうして。必要にして十分のドライヴを備えている。しかも、このアルバムでは、トラック7で珍しいことにギター・ソロも弾いている。
そのトラック7 <Strange Ways> はジョン・レノンが作ったとしても、あるいは歌ったとしてもおかしくないような曲想で、非常に興味深い。本当にこんな曲がジョンのレパートリーにあったんじゃないかと一瞬錯覚させるくらい雰囲気はよく似ている。しかし、言うまでもなく、完全にクリスティのオリジナルで、よく聴くとクリスティならではの歌である。
バッキング・ヴォーカルで Juno Moore の名が見える。ムアの娘、Juno Nancy Moore (1978- ) だろう。控えめながら効果的。他のミュージシャンはまったく関与せず、ほぼ完全にクリスティ・ムアだけの世界。
ところで、これはムアの何枚目のアルバムだろうか。単独名義で数えるとたぶん18枚目か19枚目(《The Christy Moore Collection (1981-91)》を入れれば)になる。今の時点でのこのアルバムに対するクリスティ自身の感想が公式ウェブサイトにあり、興味深い。
なお、クリスティ・ムアはアイルランドを代表する、巨星とも言うべきアーティストであり、分類すればシンガー・ソングライターだが、一般には ballads というジャンルに分類されているようだ(Claddagh レコード店など)。これはスコットランド〜イングランド・ボーダーの中世以来の伝承バラッドの意味ではなく、アイルランド音楽史に特有のバラッド・シンガーの意。扱われる歌はオリジナル曲を含め比較的新しいものが多いと思う。