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怪異を超えた神話的存在


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葉山 透『0能者ミナト (9)』KADOKAWA/アスキー・メディアワークス、2015)

 

ダイダラボッチという名前は聞いたことがあった。宮崎駿の映画「もののけ姫」で見たことがある。

だから、大体のイメジはあったものの、本作に出てきたダイダラボッチは、もっと神話の根源に近い。そんなもの、これまで怪異相手に退治してきた御蔭神道や総本山でも、まったく無理だ。歯が立たない。

身長2,000mなんて富士山の半分以上の高さだし、日本全国に神出鬼没となると対応がむずかしい。しかも、実害を与える本体部分と、被害の幻影を見せるまぼろし部分とがあり、どちらが出てくるか分からない。

そこで0能者ミナトの出番だ。彼がいったいどんな方法で解決するのか、興味津々で読みすすめると、古代と現代のそれぞれ最もディープなアプローチをとる。 つまり、本質の最奥部にまっしぐらの、いわれてみれば正攻法のど真ん中だ。それだけに、だれも思いつかなかった。古事記神話における世界創造の場面の、あ る兵器と、量子力学的思考から導かれた、「天使と悪魔」(ダン・ブラウン)ばりの超科学的方法との二つだ。

常識的人間には奇想天外な方法に見える。ミナト本人も100%成功の確信はない。数パーセントの不安がのこる。失敗すれば、日本は終わりだ。いったいどうなるのか。最後まで惹きつけられる。