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環境の視点で世の中をながめわたすと


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森住明弘『環境とつきあう50話』

 

 ぜひ電子書籍化してほしい。岩波ジュニア新書には良い本が多いが、この本もジュニア新書の名著のひとつだ。

 タイトルからすると気軽な話題が多そうだが、読んでみると、どれもけっこう重い話だ。大げさにいうと、生存に関わる。

 いちばんそれを感じたのは「明石のタコ」の話だ。そこに高級食材のアワビのことが出てくる。それも大阪湾の海水をとりいれた池で飼育しているアワビのことだ。ちょっと信じられない話だ。京都・大阪の都市排水が大量に流れこみ、赤潮が発生する大阪湾のような汚れた海の水で、どうしてきれいな海でとれるアワビができるのか。

 その仕組みを解き明かすなかで、海の水の層の話になる。

 ポイントは、水が4度で密度が最大であることだ。

 温かく密度の小さい表層の水は、密度が大きく冷たい中・低層の水と混じりにくい。結果、両者は層をなす。

 海水は、表層では光が届き温度も高いが、1000m以上の深さになると、光が届かず、海底まで均一の4度になる。

 生物学者の柴谷篤弘によると、海底の海水がずっと層をなしたままだと陸上の生物はとっくの昔に絶滅しているという。なぜそうなっていないのか。

 熱帯や温帯の海では表層は温かい。一方、北極や南極近くでは、表面から底まで均一の4度になっている。そのため、海底に沈んだ窒素やリンが混じりあい、海洋の大きな循環にのって表面に浮上してくる。それを取り入れたプランクトンを魚が食べ、食物連鎖がまわりはじめる。例えば、サケ→クマなど。窒素やリンがついには陸上に帰ってくる。ゆえに陸上の生物は何十億年も生存できる。 

 ただし、この海流の循環は、一周2000年かかるとする説がある。「イギリスの北の北海あたりで海底に潜りこみはじめ、深層流となって南下し、アフリカ大陸の南端からインド洋をへて太平洋を西から東に向かい、南米大陸にぶつかり北上して北極付近で表面にでてくる」という。なんとも壮大な話だ。

 環境を考えることは、身近な環境からはじまって、地球レベルの環境にまで思いをいたすことになる。子どものうちからこういう発想ができれば素晴らしい。

 

環境とつきあう50話 (岩波ジュニア新書)

環境とつきあう50話 (岩波ジュニア新書)

 

 

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