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中ニの数学少女が悪の組織と謎解きで対決する


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青柳碧人『浜村渚の計算ノート』

 

 著者のデビュー作。

 人気を博しシリーズ化されている。2014年時点でシリーズが6巻目まで刊行されている。

 義務教育における理数系科目の削減に憤った数学者が数学の復権を迫るために数学的謎をからめたテロをしかけ、それに対抗する警察本部の助っ人に中学二年生の数学娘、浜村渚が抜擢される。本書で四つの事件の謎解きにおいて、浜村渚が大いに活躍する。

 文章は読みやすく、登場人物、特に悪党側の描き方がおもしろく、数学的題材の取り上げ方は数学の初心者にも分かるよう工夫がされている。

 読者は本書を読んだあとには、四色問題(どんな地図でも四色あれば隣り合う国が同じ色にならないように塗り分けることができる)やゼロの意味(その位に数字が一つもないこと)、フィボナッチ数列(前の二つの数字を足した数が次の数になる数列、1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21 . . .)、π(円周率、いまだに求められ続けている「超越数」、3.14159265358979 . . .)などにずいぶん親しみを感じることだろう。

 数学者が犯罪捜査に協力するといえば、米国のテレビドラマ「ナンバーズ 天才数学者の事件ファイル」'Numb3rs' を思い起こす人があってもおかしくないが、先端的数学理論を駆使しFBIがガンガン捜査するあちらに比べると、本書はミステリーと数学の両面でやや薄味である。

  

浜村渚の計算ノート (講談社文庫)

浜村渚の計算ノート (講談社文庫)