町山智浩の本やラジオに宝がときどき埋もれている
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町山智浩『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』
米国在住の映画評論家、町山智浩の発言に時々宝がふくまれている。
そのことを初めて実感したのが、映画「Hot Fuzz」の劇場公開を求める会の運動があった2008年頃だった。その運動についてふれた町山智浩のラジオでの発言には熱がこもっていた。その通り、「Hot Fuzz」はすばらしい映画だった(2007年のアクション・コメディ映画、イギリスの田舎町にひそむ闇をえがくサスペンス映画の側面もある)。
本書が刊行されたのも同じ2008年のことだ。米国在住の映画評論家という特徴を最大限活かした、日本発の情報とは一味ちがう内容だ。ただ、現時点で読返すと、古く感じる話が多い。時事的コラムが中心だから仕方ないだろう。だけど、いくつかは今も考えさせる点をふくむ。
ひとつだけ例をあげると、「ブッシュ政権に裏切られた美人スパイ━━イラク戦争とCIAの関係」という題のコラムがある。元CIA秘密工作員ヴァレリ・プレイム(Valerie Plame, 1963-)についての話だ。プレイムがイラク戦争の鍵を握る人物であることが、このコラムでも紹介されるプレイムの自叙伝『フェア・ゲーム』Fair Game(2007)を読めばわかる。といっても、実際に読んでみると、CIAによる検閲の結果、あちこち伏字だらけだ。これほど伏字だらけの本は他で見たことがない。ひどいのになると、章のタイトルですら伏字になっているケースもある(たとえば '[Text has been redacted here.] Tour' という第2章のタイトルなど)。
プレイムとイラク戦争の関係については米国ではよく知られているが日本ではあまり知られていない。簡単にいえば、イラク攻撃の口実として大量破壊兵器開発の証拠をつかめというミッションでニジェールに派遣されたある人物がいる。イラクがニジェールから核兵器の燃料のウランを買ったという情報があったからだ。その人物は調査の結果、それがガセ情報だったと大統領に報告した。ところが、ブッシュ大統領は「イラクはニジェールからウランを輸入した」と逆の発表をした。そのことを新聞に書いたその人物に対する報復としてその人物の妻の正体が暴かれることになる。その妻こそプレイムである。もちろん、「情報部員身分保護法」違反のリークである。
この自叙伝は2010年に映画化された。
アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない (文春文庫)
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Fair Game: My Life as a Spy, My Betrayal by the White House (English Edition)
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