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『資本論』第1巻をベースに物語化


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資本論 (まんがで読破)』

 

 ドイツの経済学者、哲学者カール・マルクス(1818-83)の『資本論』はマルクス経済学最大の古典だ。本書はマルクスみずからの手によって世に問われた第1巻(1867)をベースに物語化したまんがだ。大著である原書への橋渡しになることを願ってつくられた。

 物語の主な登場人物は主人公ロビン(資本家ダニエルの投資を受入れチーズ工場を設立するが、労働者を酷使し利益を搾り取ることに罪悪感を覚える)、その父ハインリヒ(肉体労働のような苦労もなく金持ちのような欲望と嫉妬に悩まされることもない「中間の暮らし」を大事にする)、ダニエル(資本家、投資業界の大型ルーキー、冷静な戦略と戦術で人をチェスのコマのように操る)。

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 「資本の生産過程」「搾取」「労働の売買」「価値」の4章にわたって『資本論』第1巻の基本概念をやさしく提示する。「使用価値」「抽象的人間労働」「交換価値」「商品のメタモルフォーゼ」「剰余価値」「搾取」などのキーワードは欄外で説明される。これらのキーワード群と物語との関連は必ずしも分明ではないが、そのあたりに興味をもったら原書に当たってほしいということだろう。

 まんが物語という形式による限界はあるが、マルクス経済学の核にある労働力の商品化(資本賃労働関係、本書では「労働力という商品」)の考え方は繰返し出てくるのでよく分かる。

 まんが化を担当したバラエティ・アートワークスの遊び心が表れていると思われるのはロビンの父親の名前ハインリヒだ。カール・マルクスの父ハインリヒ・マルクスユダヤ教ラビだが、カールが生まれた年あるいは前年にプロテスタントルター派〕に改宗したといわれる)を想起させる。

 

資本論 (まんがで読破)

資本論 (まんがで読破)