電子書籍を出した三人の著者の鼎談
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藤井太洋、梅原涼、十市社『セルフパブリッシングで「本」を出す』
セルフパブリッシングされた電子書籍が、たまたま編集者の目にとまり、紙の書籍として出版された三人の著者が、デジタル・セルフパブリッシングの現状、および商業出版されるまでの経緯を語り合う。データが誤って表記されているが、出たのは2014年3月18日である。鼎談が行われたのは、2013年12月25日、東京創元社にて。
三人は、いづれも小説家である。したがって、詩や評論など、他分野の電子書籍の問題には、あまり関係しない。
藤井太洋の作品(近未来の技術的側面を鋭く抉るものが多い)は、三者のなかではもっとも電子書籍との親和性が高いと思われるが、意外にも、出版社による紙の書籍のほうを、いいものをつくるプラットフォームとして評価している。本を一緒につくれる相手がいるほうがいい本ができること、部数が紙のほうが十倍以上市場に出ること、したがって、より多くの人に読んでもらえ、作家としての認知度があがることを、理由としてあげる。
ブログによる全文公開とセルフパブリッシングとの比較では、これも藤井がブログの輪郭の不明瞭さを指摘し、電子書籍の完結性、「閉じている」ことの重要性を説く。
三人のなかでもっとも技術に通じていると思われる藤井は、雰囲気ではなく、冷静に表現の技術的可能性、問題点を捉えていることが印象にのこる。