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浜崎が発するシャッター音は、被写体に呼びかける


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豊島ミホ『銀縁眼鏡と鳥の涙』

 

 豊島ミホの短編小説。カメラをめぐる高校生群像を、繊細な文体で描きだす。

 文体そのものが青春期特有のふるえるこころを切取ったようである。すっかりファンになった。が、もはや豊島ミホは小説家ではない。いまは漫画家である。残念。

 主人公の鳥山英毅は中学ではカメラの人気者だった。みんなから撮ってとせがまれた。

 それが、高校で入った写真部では、スナップだよねと、言われてしまう。写真部で撮る写真とは違うのかと、落ちこむ。

 そこの写真部は二年前に天才が入ったことで、市内では有名だった。それが、銀縁眼鏡の浜崎有也。いったい、どんな撮り方をするのか。

 写真部には美女の先輩もいる。栗田美夕だ。

 栗田先輩に対する鳥山の気持ちはまったく書かれていないけれど、そのことが、かえって鳥山の胸のうちを伝えるような文体だ。いい。

 写真がうまくなりたい。撮りたいひとがいる。こうした、次元も、カテゴリも別々のことがらが、高校生のあたまのなかでは、交じりあい、うまく解きほぐせない。あの時期だからこそ、あり得る青春を描き出した豊島ミホの文体にカンパイ!

 

銀縁眼鏡と鳥の涙

銀縁眼鏡と鳥の涙