Jazz Piano and Folk
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ジャズ・ピアニストが弾くフォークソングは、フォークミュージシャン同士のカヴァーとはまた違う味わいがある。
とは、キース・ジャレットの 〈マイ・バック・ページズ〉 (Somewhere Before, 1968) 以来、多くの人が感じてきたことだろう。
このことをブラッド・メルドー(Brad Mehldau)のピアノを聴いて痛感した。例えば、次のような曲。
- Blackbird (Art of the Trio, Vol. 1, 1997)
- River Man (Art of the Trio, Vol. 5 - Progression, 2001)
- Still Crazy after All These Years (Anything Goes, 2004)
元歌はポール・マカートニー(The Beatles, White Album)、ニック・ドレイク(Five Leaves Left)、ポール・サイモン(Still Crazy after All These Years)。
通常のスタンダード曲と料理の仕方は同じなのか。理論的にはそのはずだが、どうも味わいが違う。恐らくコード進行が比較的単純なため、どれほどアドリブで複雑化しても、原曲の素朴な味わいが残るのではないか。といって、演奏は単純ではない。リリシズムあふれるスリリングな演奏であることが殆どである。
かといって、ブラッドの場合、キースほどの深みは感じない。どこか、感覚に現代的なかろみがあり、この種の曲の場合、ジャズ的というより、例えば、アレ・メッレルのようなルーツ・ミュージシャンに似た感じがする。あるいは、セルビア・モンテネグロのテニス・プレーヤー、ヤンコ・ティプサレビッチのドロップショットのような軽くて凄い感じが。
理屈はよく分からないが、ピアニストの直感で物を云うと、曲への好き度が、フォークのほうがスタンダードより、うんと大きいのではないか。ピアニストの曲への思い入れがフォークのほうが強いのではないか。ティンパンアレーの曲には現代人は感情移入することがだんだん難しくなっている。逆に、同時代人たるフォークシンガーの曲のほうがピンと来る。そんな変化の表れかもしれない。