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フロイトの『精神分析入門』『夢判断』をめぐる物語


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ジークムント・フロイト精神分析入門・夢判断 (まんがで読破)』

 

 なかなか読まれない名作を「漫画」の形で親しみをもたせる「まんがで読破」シリーズの1巻。描きおろし。漫画化の担当を行うバラエティ・アートワークスは会社が沖縄県話国場にある。代表の兼久政彦は沖縄出身。漫画で人を幸せにするという志をいだく。

精神分析入門・前編」

 ヒステリー患者は仮病あつかいされ、神経症(ノイローゼ)患者は被害妄想とみなされていた時代。ブリュッケ教授の生理研究所で神経の構造などを研究していたオーストリア(帝国のモラヴィア)出身のユダヤ人(アシュケナジー)、ジークムント・フロイト(1856- 1939)は、彼らの苦しみは本物であると考える。〔現在の精神医学では「ヒステリー」は「解離性障害」と呼び、「ノイローゼ」は多様な疾患を含むため用いない。〕

 ヒステリー患者に身体的外傷が見つからぬことから、その傷は肉体には現れない、見えない外傷なのではないかと、フロイトは考え始める。〔「心的外傷」(トラウマ)のことと、のちに気づく。〕

 その他、「精神への開拓」「夢判断」「精神分析入門・後編」「精神分析運動」「文明への懐疑」を収める。学問の継承や人類と文明などの大きな問題にまで広がってゆく。

 漫画のタッチはしっかりしており、物語仕立の輪郭もくっきりしている。読みやすい。NHK で放送した<名著30 フロム「愛するということ」:100分 de 名著>でフロイト学派に関心をいだいた人にも好適ではないかと思う。評者は honto 版の電子書籍で読んだ。本書を読んで、北山修河合隼雄らの顔がつぎつぎに浮かんでくる。

  

精神分析入門・夢判断 (まんがで読破)

精神分析入門・夢判断 (まんがで読破)