Tigh Mhíchíl

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Liam O Muirthile, 'Tine Chnámh'


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〔蔵出し記事 20050928〕

 2005年の夏、ゴールウェーで少し劇を見た。一つはドルイド・シングの渾名で呼ばれるドルイド一座によるシングの上演。世評は高かったが、私は必ずしも感心しなかった。特に、デアドラこと「悲しみのデルドラ」 Deirdre of the Sorrows は酷かった。派手すぎるメリハリにすっかり興ざめした。ただ、「海へ騎りゆく者」 Riders to the Sea は、最後の泣き女 keening women の演出も卓抜でかなりよかった。

 しかし、劇で何といってもよかったのは、「大かがり火(ボンファイア)」 Tine Chnámh である。これは、よかったライダーズの百倍くらいよかったと言っても言い過ぎではない。原作は Liam Ó Muirthile の長詩。

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 といっても、この詩人は知られていないかもしれない。ただ、彼の 'Na Conghailigh' はクリスティ・ムーアがアルバム Éist で歌っているのでおなじみだろう。

 この Tine Chnámh「骨の火」はゴールウェーの Taibhdhearc (Amharclann Náisiúnta na Gaeilge) で見た。劇もアイルランド語なら、劇場そのものも完全にアイルランド語の空間で、劇場に入った瞬間から出るまでアイルランド語以外は全く聞こえなかった。まるで、ゴールウェーという都会に突如ゲールタハトが現出したかのようであった。俳優たちが時おりうたう歌も実にすばらしく、劇の異教的展開と相俟って、劇場は異次元世界のような心地がした。わずか1時間という長さにこれほど濃密でかつ開放的な空間をつくりあげた演出者 Darach Mac Con Iomaire の手腕に脱帽。