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医療保険をじっくり考えるためのガイド


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内藤眞弓『「一生安心」にだまされるな! 医療保険はすぐやめなさい』ダイヤモンド社、2013)

 もっと早く読めばよかった。

 そんな感想をもらす読者も多いだろうと思われる。評者もその一人だ。受取り方は人によりさまざまだろうけれど。

 医療保険に現に入っている人、これから入ることを考えている人は一読しても損はない。医療保険は高い買い物である。それに比べれば、本書の価格はその買物指南として十分見合うものだ。

 保険は分かりにくい。約款はもとより、保険を売込む人の言葉もそうだし、似たような各社の保険を比較しても、どこがよいのか、正確に精密に判断するのは、なかなか難しい。

 本書を読んで、(医療)保険の本質、各種保険の特徴と注意点、人生における健康な生活設計などについて、基礎的なところを十分に理解してからでも、医療保険について態度を決めるのは遅くない。

 とはいえ、本書で、入るならこの保険、と実名入りで薦める保険の中には加入年齢の制限などもあるので、読むなら早いほうがよいかもしれない。また、ある保険商品がよいと分かっても、それには販売時期があり、契約しようとしたときには販売が終了していることもある。

 本書の基本的主張をシンプルに述べれば、おそらく、(医療などのために)自由になるお金が150万円貯まっている人は医療保険は不要である、ということだろう。150万円という額の根拠は必ずしも明らかではないけれども、医療保険に払い込む保険料の総額や、入院や手術時に実際に受取ることのできる金額などを総合的に勘案した、FPとしての経験値と考えられる。

 著者は現在はFP(ファイナンシャルプランナー)だが、もとは大手生命保険会社に13年間勤務していたので、保険の仕組や実際にくわしい。各人各様の種々の相談を受ける中で割り出したアドバイスが本書には満載である。

 ひとりひとり人生の状況や事情は異なる。けれども、本書に述べられたさまざまのケースから何かヒントが得られるかもしれない。

 〈医療保険に限らず、保険は病状を改善するためのものではなく、所定の要件(医療保険であれば「所定の入院」や「所定の手術」)を満たしたときに現金の給付が受けられるものです。〉(第6章)という指摘は、当たり前のことなのだけど、忘れがちだ。この基本をおさえておくだけでもだいぶ違う。

 医療保険を考えるときに問題になる人生の重要な時機別の考え方(就職、結婚、出産、退職、年金、介護など)、保険のCMで耳にする「がん保険」や「先進医療」「終身医療保険」などについて考えるべきポイントが、分かりやすくまとめられている。

 何より、快適で健康な人生を送るための積極的な提言に満ちているのが、本書を読んでよかった最大の点だ。