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2005年の語り、本、科学を振返る 2005 in Review


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〔蔵出し記事 20051230〕

 2005年を回顧すると、語り、本、科学の三方面でこれまでにない発見をした年であった。それについて、以下、略述する。

語り

 語り(scéalaíocht)に以前から関心はあったけれど、2005年に、初めて何人もの本物のアイルランド語の語りを行う人を見る機会に恵まれた。私が見た九人の語り手の名を記しておく(5 Samhain 2005, Comórtas 18, Corcaigh)。

  • Máirín Uí Lionáird, Cúil Aodha
  • Séamus Ó Méalóid, Bóthar na Rós (BÁC)
  • Joe Ó Dónaill, Páirc Beauvale (BÁC)
  • Tomás Ó Mainín, Tíorabháin (Co. Chiarraí)
  • Bríd Anna Ní Bhaoill, Rann na Feirsde
  • Maidhc P Ó Conaola, Sídheán (Co. na Gaillimhe)
  • Domhnall Ó Ceallaigh, Gort na Tiobratan (Co. Chiarraí)
  • Ray Mac Mánais, Fleenstown (Co. Átha Cliath)
  • Seán Ó Duinnín, Cúil Aodha

 さらに、大阪のケーブルテレビで大阪の昔話を大阪弁で語る人を見た。その語り人(語り部)三人の名を挙げておく。

  • 宇津木秀甫
  • 花邑てん
  • 西川増子

 語り人といえば、ケリーの至宝バブさん(Bab Feiritéar)を2005年に喪ったのは痛切な衝撃だ。なお、エラハタスの第17競技は彼女の名を冠した語り(ストーリーテリング)のコンテストである(バブ・フェリチェール杯)。

 

 2005年ほど本を手に入れるのに必死になった年は記憶にない。結果は三勝二敗くらいか。タッチの差で逃すことも多かった。

 古書店でも無論アマゾンでも買えないような本がアイルランドには沢山あるということが分かった年でもあった。だいいち、ある種のアイルランドの本には ISBN 番号がない。さらに、既に版元の目録から消えた本でも堂々と新刊書の棚に並んでいることもある。全く何が起こるか分からない。アイルランド語の書物の流通には一般の書籍とはやや違う不思議な世界が広がっていると実感した一年であった。

 さらに、一般書(例えば英語の書)との大きな違いは、その分野の人は大事な本をことごとく読んでおり、その知識は当然の前提となっていることである。

 その種の大事な本は一見すると目立たぬ小著であることが多い。しかし、その内容は完全に人々の頭の中に入っており、その記憶の質は口承文芸のそれとあまり変わらないように見える。

 そのことがどうやって分かるかというと、その種の本を読んだ後に、全く関係ない別のものを読んでいて、その本が前提となって語られていることに気づくことがあるのである。それは、学術論文におけるような引用の体裁をとらず、知っていて当たり前という調子で話されるので、そのとき初めて気づくのである。その種の本を一つだけ挙げると、コール(Cóil)という稀代の歌い手の本『レーラの毛布』がある (Fearghas Mac Lochlainn, Pluid Dhorcha Leára: Amhráin a chas Cóil Neaine Pháidín Mac Donncha)。

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科学

 今日の世界で人々の尊崇を最も集める種類の真理は「科学的真理」であろう。ある事象に関し〈科学的にはXXXである〉と言われれば一般人は「ははーっ」とひれ伏してしまう。

 けれど、科学なるものにこれほどの権威が備わった歴史的経緯を見ると、待てよと思わざるを得ない。王立協会の創設(1660 年)には明確な意図があったと主張する人がいる。確かに、それ以前と以後とでは人々の科学に対する態度が変わったように思える。

 20世紀に入りハクスレーなども指摘をしてはいるが、仮説に過ぎぬものをあたかも絶対的真理のように見せかける技巧は今日、ますます発達している。その意味で、2004年、コリンズ兄弟が科学的独裁に関する本を出したことは意義深い。

 

 (BSE 関連等で)科学の名の下に恐るべき非道が行われている(科学という「お墨つき」が極悪のために利用されている)ことが明らかになった2005年、「科学的真理」の仮面を剥ぐために立ち上がる人々が増えた。焦眉の急は「プリオン説」と「鳥インフルエンザ」をめぐる真相を探ることである。