読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Tigh Mhíchíl

詩 音楽 アイルランド

記事一覧

視聴録 《ジョンとジャッキー》 DVD 'John Renbourn and Jacqui McShee'

DVD 音楽

[スポンサーリンク]

John Renbourn and Jacqui McShee:  In Concert with guest Clive Carroll (Pentangle Ltd / Hard Road Recording HRDVD 003, 2005; Region Free NTSC Format DVD)

 

 ジョン・レンボーン(1944-2015)がジャッキー・マクシーと行ったライヴの模様を収めた DVD (Buddle Arts Centre, Newcastle upon Tyne, England)。貴重な記録といえる。繰返し視聴するに値する佳作。

 なぜ「佳作」であって「名作」でないかというと、ジョンとジャッキーの出来が異なるからである。まず、音質的にはジョンのギターは相当良い音で録れている。ひょっとしたら、通常の CD で聴けるよりよい音かもしれない。ラルフ・ブラウン製のギター(OM)の陰影が余すところなく捉えられている。ところが、ヴォーカルの音質がもう一つ。どういう理由によるかは分からないが、ヴォーカル部分に時々ブツッというノイズが載る。特に、ジャッキーのヴォーカルの時に。これは控えめに言っても本作の価値を下げる。

 ジョンに関していうと、近年の演奏の中でもかなり良いほうに属する。ギターの音質がよいこともあり、微妙で繊細なプレイの細部がよく聞取れ、結果として彼の演奏の真価がよく発揮されている。彼自身も乗っているように見える。特に、'Sandalwood Down to Kyle' (Dave Goulder 作)の前半部における自信に満ちたプレイはすばらしい。さらに、ボーナス・トラックに収められた、「ギター小僧」時代に始まる自身のギター歴を語る部分が興味深い。ビッグ・ビル・ブルーンジーのブルーズ・ギターのスタイルから、60年代初頭のフォーク・リヴァイヴァルを機にトラディショナル・フォークへとギター・スタイルを適応させてゆく際の体験談は、中でもすこぶる面白い。

 本盤当時 61 歳となっていた彼(ところでエリック・クラプトンも当時 60 歳だった)にはライヴァルたちへの対抗心などなく、ただ淡々と優れたギタリストたちの奏法について、実演しながら解説する。つまり、デイヴィー・グレアムの DADGAD チューニングや、マーティン・カーシーのスタイルなどを弾いてみせるのである。ジョンの「ギター少年」の頃そのままの溢れるような笑顔がいい。

 ペンタングル時代に話が及ぶと、自分で 'A Maid That's Deep in Love' (Cruel Sister の一曲目)のメロディーを歌いながらドローンを用いた奏法の実演をする。その際、右手の指使いがしっかり映るが、よく見ていると実はドローン弦には本当に控えめにしか触れず、きわめて繊細な弾き方をしていることが分かる。

 ジャッキーに関しては、どちらかというと、やや精彩を欠く。特に、ソロ歌唱において、高音域がいつものようにきれいに出ていない。さらに、そういうソロの時に限って、上述のようにマイクのノイズが入る。しかし、ブルージーなナンバーなどでのハーモニー・ヴォーカルはさすがの輝き。

 ジョン・レンボーンを大きくフィーチャーした DVD は、知る限りでは、本作を含め 4 枚は出ている(他に、Stefan Grossman との共演などがあるが未見)。2002年以来、毎年一枚づつ出ていたことになる。その中では本作は一二を争う出色のもの。ギターの音質に関してはこれが今のところベストと思う。

 ファンの一人として叶わぬだろう夢を述べると、ぜひバート・ジャンシュと一緒にやったライヴ DVD を発表してほしかった。本作でもバートの持ち歌を少し歌ってみせていることからも、なおも彼に対する愛情と尊敬を持合わせていることが伝わってくる。何も、本作のゲスト・ギタリストのクライヴ・キャロルに不満があるというのではない。やはり、「バート・アンド・ジョン」こそは史上最強のアクースティック・ギター・デュオではなかったか。枯れた境地に近づきつつあったとはいえ、彼らほどのギタリストはまたといなかった。

 

John Renbourn DVDs

  • John Renbourn: Rare Performances 1965-1995 (Vestapol, 2002)
  • Pentangle: Captured Live (Intense Vision, 2003)
  • John Renbourn: In Concert (Vestapol, 2004)
  • John Renbourn and Jacqui McShee: In Concert with guest Clive Carroll (Pentangle Ltd / Hard Road Recording, 2005)

 

広告を非表示にする