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真剣にやれば、かざる必要ない--荒川弘の農業高校マンガ第5弾は馬術にくわしい


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荒川弘銀の匙 Silver Spoon 5』小学館、2012)

 

 八軒勇吾の農業高校一年目は絶賛継続中で実りの秋に突入。秋のエゾノー祭での出し物を考えている。八軒は友人の駒場の野球での活躍ぶりを観て、真剣にやってるのを観るだけで引き込まれた自分に気づく。エゾノー祭では、特別なことをやらなくても、ふだん通りの馬術部の姿を見せればよいのではと考える。そこで、「真剣にやれば、かざる必要無いんじゃないかな。」という。

 ちょっとここで脱線してぼくのマンガの読み方の変化を。というほど大げさな話ではないが、ある金属製のしおりを買った。

 このシリーズは「少年サンデーコミックス」のフォーマットで読んでいるのだが、手に取るには非常に具合がよいサイズだ。寸法を mm で表すと 112×174。つまり、小B6判という判型。コンパクト判 トランジスタ判という。B6判より一回り小さい。

 ただ、電子版に比べて、手書き部分の細かい字がときどき読みにくい。「少年サンデー」の判型がB5だから、半分以下に縮尺されている(面積比で 42%)。そこでこのしおりの登場。先端部分に丸い拡大鏡がついているのだ。拡大鏡機能はおまけみたいなものだろうと思ったら、これで結構よく見える。自分で買うにはちょっと高い(千円を超える)と思う人は老眼鏡を必要とする読書家に贈る手もあるかもしれない。宣伝ではないけれど、興味をいだく人のために商品名を書いておくと「Magnifying Glass (虫眼鏡) Bookmark [ルーペ ブックマーク(しおり)]」というもの。楽天で手に入れたが今はないようだ。スリップオン製の「ルーペ ブックマーク S15-0218」というのが近いかもしれないが、これも、アマゾンなどで在庫切れのようだ。

 

 これから紙の本で漫画を読むときにはお世話になりそうだ。けれども、ふだんはできるだけ電子版を買ってタブレットで好きなサイズにして読んでる。

 さて、『銀の匙 Silver Spoon 5』に戻ると、八軒はすべった牛が横の駒場に当たるのではないかと危惧して声をかけてかばおうとしたはいいが、みずから転んで腰を打撲する。あとで、あの一瞬でそんな事を考えてたのかと驚かれるが、運動神経のなさに、駒場に「おまえ頭の回転速いけど身体がついて行かないんだな…」といわれる。さらに、駒場は八軒の気持ちはありがたくもらっておくといったあとで、神妙な顔でこう告げる。

あーもー、お人好しもありがたいけどほどほどにしとかんと、……巻き添えでケガされるのはこっちも辛いからさ。俺みたいなのは放っといていいから。八軒は人にばっかかまってねーで自分の事やれよ。

 ところが、いざ、馬術部で一年の障害初挑戦をすることになったとき、一年生の中でマロンに乗った八軒だけが跳べない。もっと自分が練習しなきゃいけないと悲壮感ただよう八軒に対し、御影アキはダメだと、馬にも休みが必要だといい、こう叱る。

一人じゃ出来ない競技なんだから馬(パートナー)の事も考えなきゃダメっしょ!!

 そんなこんなで、迷いに迷った八軒はこんどはマロンに向かって「俺一人じゃ跳べないから、フォローたのむ!」と語りかけ、再挑戦する。だが、やっぱり障害の手前でマロンは止まってしまう。八軒が諦めかけたとき、御影の「八軒君!! マロンの背中にくっついて!!」の声がとぶ。その瞬間、馬は障害のはるか上を跳んでいた。

 それを見ていた馬術部の顧問の中島美雪(よしゆき)と馬術部の上級生との会話。

「馬術は一見、人が馬を意のままに操っていると思われがちですが、実は馬の能力に頼る所が大きいのです。」
7割は馬がフォローしてくれてるって言う人もいますね。」
「乗り手をフォローしてゴールまで導いてくれるのですから、まず我々に必要なのは馬に気持ち良く走ってもらおう、という想いと信頼です。」

 この会話は示唆に富む。7割は馬のフォロー、と。人間の言語によるコミュニケーションにおいて、7割は音調と言われる。意味は残り3割に過ぎない。これに似ている。つまり、こちらが何か操ろうとする意志は3割しか通じないということかもしれない。

 北海道産の和種の馬「道産子」はなかなかかわいい。