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グルジェフの映画 Scannan faoi Ghurdjieff


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 過日、アイルランド語を勉強中の一こま。

 「一番好きな映画を選べ」という課題が与えられた。各自がそれを挙げて、説明し、論じ合うのである。これを全部アイルランド語で行う。

 私はとっさに「注目すべき人々との出会い」 (Meetings with Remarkable Men) というのを挙げた。急に指名され、他人のことを考慮する余地なく口から出たのである。それが茨の道の始まりだった。

 アイルランド人はおろか、アイルランド系米国人も、ハンガリー人も、ともかくその場にいた誰もグルジェフの名前を知らぬのである。まさかと思った。
 ならばと、グルジェフ曲集を弾いているキース・ジャレットの名を挙げてみる。だが、これも皆知らぬ。きょとん。そんな馬鹿な。ダーヴィッシュという名前を挙げても誰もピンと来ない。旋回舞踊のことは、北欧の人ならピンと来るかもしれない。

 仕方ないので、グルジェフの生涯を描いたこの映画がいかに面白いかということ、映画音楽もどれほど素晴らしいかということについて、熱弁をふるった。だが、それは恰も火星人に地球の風景を説明するようなもので、相手に何の予備知識もなければ、言語による説明には限界があることを知った。と同時に、相手に一から説明するためにはよほど戦略を練ってあの手この手でやらねばならぬと思った。そのためには一分でいいから考える時間が必要である。それがなかった状況でこれを選んだのは失敗であった。「タイタニック」を選ぶべきだった。これなら、皆のしたり顔を見ながら楽に話せる。

 ECM から出ている Chants, Hymns and Dances (Tsabropoulos [piano] and Lechner [cello]) を試聴しているときに、このような体験を想いだしたのだった。このアルバムにはグルジェフの曲だけでなく、ツァブロプーロスによるビザンツ聖歌に基づく曲も収められている。この方面は、実はアイルランドともつながりがある。アイルランドキリスト教はもともと東方教会の霊性と極めて近い面があるからである。

 この映画は DVD にでもなっているのだろうか。それはありそうもない〔実際にはDVD化されているが、現在は高価〕。そうだ、もう一つ想いだした。私の熱弁は無駄ではなかった。相手のアイルランド人は、私の話が終わると、映画の題名を再度確認した。明らかに見る機会があれば見てやろうという気がある徴である。だが、果たしてアイルランドでこの映画は上映されることがあるだろうか。

 

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