Tigh Mhíchíl

詩 音楽 アイルランド

記事一覧

ルピナス探偵団の記念碑


[スポンサーリンク]

津原 泰水『ルピナス探偵団の憂愁』創元推理文庫、2012)



 ルピナス探偵団シリーズの第二作にしておそらく最終作。第一作の読者なら文句なしに楽しめるし、もっと読みたいと思うだろう。

 探偵団の四人のメンバーのうち一人が世を去る。それが冒頭の物語「百合の木陰」だ。彼らがルピナス学園を卒業してから数年後の出来事で、残された三人は葬式で顔を合わせる。ところが、彼らが直面したのは〈彼女が死を前にして百合樹の林に造らせた、奇妙な小路の謎〉だった。ここから、〈探偵団"最後の事件"〉が始まる。この物語はまことにシリーズの最後の事件を飾るにふさわしい傑作だ。百合樹(ゆりのき、半纏木)にまつわる親子の悲しい歴史がからむ濃密な物語。

 第二話「犬には歓迎されざる」、第三話「初めての密室」、第四話「慈悲の花園」と順に時を遡り、高校卒業式の時点(第四話)まで戻って本書は閉じられる。

 探偵団の四人はまさに探偵団というにふさわしい多様な役割を果たす。語り手の彩子は姉の不二子が巡査であることから、その上司の庚午とのつなぎの役割が大きい。少年少女の探偵団が警察と連携し活躍するのはここの人脈から。キリエは彩子の小説を出してやろうと編集者になるほど義理がたく、つよい意思をもつ友人。美しい摩耶は考えることが苦手だが情愛の強さを秘めている。祀島は探偵団の頭脳ともいうべき博学な人物。感情に流されず怜悧な論理を組立てる。

 この四人は誰ひとり欠けても成り立たないであろう絆で結ばれている。それだけに四人のうち、一人が他界したからには、読者もこの物語との別れを認めざるを得ない気持ちになる。高校時代からその後の数年間までの奇蹟のような友情の物語を結晶のごとく凝縮させた傑作青春ミステリ。


広告を非表示にする