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シャンプーが毛髪の健康を阻害する


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宇津木 龍一『シャンプーをやめると、髪が増える 抜け毛、薄毛、パサつきは“洗いすぎ”が原因だった!』(角川書店、2013)[Kindle版]



 目からうろこが落ちるどころではない。

 仰天するようなデータや論点がぎっしり詰まっており、ヘアケアについての通念に革命を起こすくらいのことが書いてある。

 ひとことでいえば、シャンプーが毛髪の健康を阻害するということである。シャンプーがなぜよくないのか。その成分について。毛髪の健康はいかに維持され増進されるか。それらを丁寧に説明する。全体の論旨はシンプルで明快である。

 著者は形成外科医。外科医としての皮膚治療などの経験をふまえ、「世間の常識」がいかに「非常識」であるかを、声高にではなく、諄々と説く。なぜ、世間の常識が現状のようになってしまったかの歴史的原因も指摘される。

 このような論旨から、非難や批判だらけの、いやな雰囲気の書物かと想像されるかもしれないが、まったく逆で、建設的かつ希望にあふれた調子の本である。それは人体は奇跡であるという感動に満ちた信念から発するからであると思われる。

 話は女性にも男性にも関係し、毛髪だけでなく、日々の健康管理につながる提言もなされる。特にシャンプーに代わる方法として、「ぬるま水」による洗髪と、その前のブラッシングの重要性が強調される。このあたりは、実践してみて評価しなければならないところではあるけれど。

 本書を読んでから、人ごみのなかにいるときに、無意識に烏の濡れ羽色の黒髪に反応するようになった。それは単に毛髪という身体の表面的なものを見ている感覚ではなく、その背後にある、その人の生き方の表明、現れとして見えている感覚なのだ。ふしぎである。