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「オレンジ色の猫」って何色の猫?


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鈴木 孝夫『日本語と外国語』(岩波新書、1990)



 言語をコミュニケーションの道具と考えたり、言語の主たる役目を伝達行為においたとする。そこから言語を研究する「語用論」(pragmatics)や文法論の研究が長足の進歩をとげているとしても、ひとつ、あまり注目されてこなかった領域がある。ことばの「描写機能」や「叙述機能」の働きである。本書はその観点から、日本語と外国語(英語、フランス語、ドイツ語、ロシア語)との比較を試みる。

 つまり、人間が世界を認識する手段としてのことばより、むしろ、その認識結果のあかしとしてのことばに着目する。ことばで世界をどう把握しているのかという問題である。

 本書があげる端的な例がアガサ・クリスティThe Clocks 『沢山の時計』から引用される。そこに 'an orange cat' <オレンジ色の猫>と出てくる。これがすぐには理解しがたいのは我々が頭の中で日本語の<オレンジ色>にこだわっているからである。同様に、英語では虎も orange 色と考えられている。

 実は、これは日本語でいう「明るい茶色」「赤茶色」に相当する。モンゴメリの『アンの夢の家』(新潮文庫Anne's House of Dreams に「みかん色の猫」というふしぎな訳が出てくるわけはこれで解ける。


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