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本とわたしの関係は、深い井戸をめぐるように


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小池 昌代『井戸の底に落ちた星』(2006)



 本をめぐる本。

 本を読むとは、どういうことなのだろう。その問いは、単に本について考えることを超えて、読むひとのことをも考えさせる。

 本書は、詩人・小池昌代がさまざまな本について書いた書評と、エッセー、詩、および、書き下ろし短編小説をおさめる。そこには、本をめぐる歓び、哀しみだけでなく、本を読む者の孤独や、生と死の問題がするどく顔を出す。稀代の書き手である小池昌代の四つのジャンルが読める贅沢な本だ。

 全体の3分の2を占める書評は、ほとんどが小説あるいは散文についてのものだ。詩または詩に関する本はごく少ない。けれども、散文であっても詩以上に詩らしい作品もある。

 もし、あなたが未知のよい本を探し求める人なら、あるいは既読の本の未知の面に関心のある人なら、本書は手に取る価値が大いにあるだろう。

 印象にのこる書評は多いのだが、なかでも、ベケットの『ゴドーを待ちながら』から感じとった世界の戦慄には目をひらかれ、書評を書くのが困難な作家と前置きしながらもエリアーデの「ムントゥリャサ通りで」から「夢の培養土」のような「光を含んだ泥の塊」をつかみだした読みには、しびれる。


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