読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Tigh Mhíchíl

詩 音楽 アイルランド

記事一覧

意味なんて探さなくていい


[スポンサーリンク]

三角みづ紀『夜の分布図』(マイナビ、2013)[Kindle版]



 よむ者のこころを開放するような詩集だ。

 たとえば、「正しい音楽」という詩がある。すでに、その題名で、ひとは固定観念からときはなたれる。ことばの自由な海へとおよぎはじめる心地がする。

 「正しい」も「音楽」も、だれでも知ってることばだ。だけど、このふたつのことばを組合わせてみようと考えたひとは、いままでいただろうか。

 音楽とくれば、いろんな形容が考えられるけれども、そのどれも、正しいかそうでないかには無頓着だ。作曲科の先生はべつだろうけど。

 みじかい詩なので、全文を引用する、といいたいところだけど、えんりょして最初の2連のみ。

正しい音楽


どこにもいないみたい 晴れた
どこにもいないみたい そっと
どこにもいないみたい うすい
白の布を身にまとって
窓からしのびよるひかりだけで
成長していく


砂でできた壁をなぞって
この耳に近づかないで
心地よいと泣きたくなるから
この耳に近づかないで


まるで、音楽が聞こえてきそうな詩行だ。ラップのようでもあるし、謎かけ詩のようでもある。正しい、はリズムにかかるのだとすると、正しいリズムなのである。

 うつくしく、音楽的で、やさしく、あらあらしい詩集だ。詩行のあちこちから、かすかに、再びむかえるかもしれない洪水の予感がきこえる。まるで「プリ・アポカリプティク」詩のように。

 「意味なんて探さなくていい」は「水面」という詩の第3連からの引用。


広告を非表示にする