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マザー・グースの註釈を親しみやすく


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William Baring-Gould, Annotated Mother Goose (Random House, 1988)



 マザー・グース(ナーサリ・ライム)を1巻本で手軽に註釈つきで読みたい場合に好適の本。

 読みやすいレイアウト(広く取った欄外に註)と豊富な挿絵のおかげで読んで楽しい。

 急いで付加えると、「手軽に」と書いたが、手軽にはおそらく入手できない。現在ではどちらかといえば稀覯本となってしまった。

 マザー・グースについてはもちろん Opie 夫妻の古典的名著 The Oxford Dictionary of Nursery Rhymes があり、それにあたれば異版をふくめ、かなりのことがわかる。が、いかんせん、学問的な作りになっており、一般読者には敷居が高い。

 本書には884篇のマザー・グース詩が収められており、さらに Greenaway や Rackham や Parrish らのイラストレーションが(白黒で)収められている。Oxford 辞典と同じく、本書も Baring-Gould 夫妻の著書ということで、なぜかこの分野は夫婦が研究している。

 本書の註釈の短い例を一つ(761番)。

A pullet in the pen
Is worth a hundred in the fen!


/p/の頭韻と pen/fen の脚韻が印象的で、いちど聞いたら忘れられない詩句だけれど、現代人にはちょっとピンと来にくいところもある。それに対する本書の註はこうなる。

Or, as we would be more apt to say today: "A bird in the hand is worth two in the bush."


アメリカ人的な発想だとそうなるのだろうか。日本のことわざだと、意味合いは違うが「遠くの親戚より近くの他人」が遠近にかかわる言い回しとしては似ている。