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意味の生成の根幹に触れる研究


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瀬戸賢一『レトリックの知―意味のアルケオロジーを求めて』(新曜社、1988)



 Aがいつの間にか反Aを意味する。

 Aと反Aとが結びついて一つの意味をかもしだす。

 こんな逸脱のパタンに着目し、意味の生成の根幹をレトリックを通して考えようとする意欲作。ひかえめに言っても、知的にスリリングな試み。

 急いで具体例をあげておくと、最初のは、たとえば、かわいさあまって憎さ百倍。つぎのは、たとえば、「公然の秘密」。これらの具体例を思い浮かべただけで、なんでこんなことが可能だろうと思ってしまう。

 レトリックの研究の歴史はじつは非常に古い。これについてごく簡単に概要を述べるだけでも大変なので、古代とルネサンス期のレトリックについての秀逸なサイト Silva Rhetoricae (レトリックの森)をあげておく。

 レトリックはさまざまな分野からのアプローチが可能だが、著者は主として言語学の立場から考察している。まれなる名著と思うが、残念ながら絶版。