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辞書のあやまりは半永久的に保存される


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高島 俊男『お言葉ですが…〈3〉せがれの凋落』(文藝春秋、1999)



 高島俊男のことばに関する文章を集めたシリーズ「お言葉ですが…」の3巻目。

 「日本の辞書は甘い」という文章がある(1998年8月6日)。「臥薪嘗胆」ということばについて、日本の辞書が何を記述してきたかについて、詳細に述べてある。日本最大の国語辞書『日本国語大辞典』にある記述がウソであるとある(『史記』や『呉越春秋』を典拠にするのはおかしいということ)。

 なぜウソの記述があるかといえば、国語辞典というものは、(わざわざ原典を確認する手間をかけることなく)それまでにある辞書の記載をまるまる拝借したり、表現を変えたりして作ったりしているからである。だから、まちがいに気づかない。その後にできた辞書でこれをひきうつしたものもある。ゆえに、「辞書のあやまりは半永久的に保存される」。

 この誤りが、そもそもどこから始まったかについては、最終的にはわからないだろうが、いろいろと調べた結果、明治39年の『故事熟語辞典』まではさかのぼれるとのことだ。

 このあたりのことは、辞書を執筆したひとならだれでも知っているような、いわば、「業界の秘密」に属することだろうけれど、高島俊男のように、はっきりとそれを書く例はまれだ。

 なお、ひとこと加えれば、このような事情は、他の種類の辞書についてもあるだろう。英和辞典などでも、もちろんある。