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『白鯨』を21世紀の視点で読む


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巽 孝之『『白鯨』アメリカン・スタディーズ (理想の教室)』(みすず書房、2005)



 19世紀米国の長編小説『白鯨』は「世界名作十大小説」に入るほど著名でありながら、その本当のおもしろさが広く知られているかどうか。

 米文学および米文化を語らせたらこれほど鋭く面白い人はなかなかいない著者によるハーマン・メルヴィル『白鯨』読解は、ひかえめに言っても知的にスリリングな書だ。21世紀のひとがいま『白鯨』を読めば何が見えてくるのか。

 歴史的に見ればもちろん日本も関係する。世界の捕鯨文化を語る上で、かつての米国の政策と日本の現下の方針とはそれほど離れてはいないのに、周知の通り、現代ではまったく語り合う地平すらないように見える。だが、本当にそうだろうか。

 本書は、単なる魔獣モービ・ディクへの復讐譚とする観方から、時空を超えて現れる巨大生物、たとえば核時代のゴジラにその影響をたどる観方まで、幅広く、わかりやすく検討する。

 もちろん、中心にあるのはテクストの精密な読みで、エイハブ船長をはじめ、拝火教徒フェダラーの謎、アメリカン・ルネサンスにおける「明白なる運命」との関係等々、抜かりなく考察がすすめられている。

 さらに、『白鯨』第1章、第135章、エピローグの著者による翻訳が附く。これはまことにうれしいボーナスだ。


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