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『アイルランド伝統音楽必携』第2版


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Fintan Vallely, ed., Companion to Irish Traditional Music, 2nd ed. (Cork UP, 2011)



 アイルランド伝統音楽について学んだり探求したり研究したりする際の最良の道しるべのひとつが第2版になった。第1版(1999)が478ページだったのに対し、この第2版は832ページと、1.74倍に分量が増えた。最新の研究成果を反映している。約1800ある項目一覧は公開されている。

 一つ一つの項目は重要なものであれば、かなり丁寧に記述されており、たとえば、'song' の項を引くと、37ページほどある。その項目の中は分野別に細分されており、それぞれに専門家が執筆している。本全体では執筆者の数は200名に達する。

 楽曲の構造にかかわる項では楽譜も使われている。楽器などの図版も豊富に収められている。白黒だが写真も多い。

 第1版にはなかった項目で日本の読者の目を惹くのは 'Japan' の項だろう。2008年の時点で日本にはわずか千人あまりのアイルランド人しかいないと書かれた直後に日本全体で80以上のアイリシュ・パブがあり、その数は増え続けているとも記されている。日本でのアイルランド伝統音楽の状況については東京と関西のことが詳しく述べられている。367ページに出ている日本の演奏家の写真の左端は有名なバウロン(打楽器の一種)奏者のトシだ。

 ありがたいのは巻末の参考文献表だ。相当よく調査されており、この方面で詳細を知ろうとすれば、まずここを見ないと始まらないだろう。

 本書刊行後、えらいことが起きた。電子版が2013年2月1日に出たのだ(Kindle 版と iBooks 版)。本には詳しい索引が附いているけれど、電子版のほうが検索は網羅的にできる。それに、重すぎて持ち歩くことなど考えられなかったものが今や簡単に持ち運べる。夢のようだ。

 電子版にも本書に収められた楽譜を含む図版や写真や参考文献表は収録されている。さらに、各種団体等へのリンクが電子的に機能し、簡単に該当サイトに飛べる。