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日本古代が舞台の先鋭なファンタジー


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上橋菜穂子『月の森に、カミよ眠れ』(偕成社文庫、1991; 2000)


       


『精霊の木』につづく上橋菜穂子の第二作。日本古代が舞台のファンタジーである。第25回日本児童文学者協会新人賞(1992年)を受賞している。

 祖母山(宮崎県)の「あかぎれ多弥太伝説」(武田清澄著『日本伝説集』)に基づく。蛇ガミと娘の婚姻譚である。

 著者に影響を与えたのは、ローズマリー・サトクリフ(Rosemary Sutcliff, イギリスの歴史小説家)による歴史物語の、歴史的なものの見方、過去の物語をリアルによびおこすやり方、およびルーシー・M・ボストン(Lucy Maria Boston, イギリスの児童文学作家)、トルキーン(トールキン)。

 著者の文化人類学者としてのフィールドワークはオーストラリア都市部で白人とともに暮らすアボリジニと文化の変容である。

 「闇の中、ホタル火色に燃えあがる、おそろしくも美しいカミ」(5頁)がリアル。おそらく、まったく関係ないが、池田澄子の代表句「じゃんけんで負けて螢に生まれたの」には、この美意識と通底する感性があるかもしれない。

 山と里、アワやヒエと稲、カミとオニ、ムラと都、川と結界、女と月、闇と光、等々さまざまに考えさせる種を含む。

 語りがやや錯綜し、判りにくい面があるが、タヤタ(蛇ガミ、多弥太)の存在感は圧倒的である。


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