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特等添乗員αの婚約者に危機が


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松岡圭祐『特等添乗員αの難事件III』角川書店、2013)

 

 特等添乗員αのシリーズ第3弾。主人公の浅倉絢菜のフィアンセ、観光庁の壱条那沖の周辺にある大問題が勃発する。果たして那沖はこの危機を切抜けられるのか。

 こういう緊迫した主筋とは別に、絢菜の添乗員としての旅先での出来事も織込まれる。トルコへの旅では別の日本人旅行客を率いる大手旅行会社の正社員の添乗員清藤遥香と知合いになる。絢菜のほうは派遣添乗員なのだ。

 知識では正社員のほうが上回るものの、現場での閃きや気転の感度で絢菜が優れたところを見せ、ツアーに同行していた遥香の上司の弓削治朗に挨拶される。弓削は絢菜の評判と婚約者の観光庁コネクションに目をつけたのだ。後日、弓削は絢菜を自社に引抜く。

 だが、そういう副筋と思われた絢菜の運命も那沖のそれと交差し、からみ、事態は風雲急を告げる展開となる。これまでにない緊迫の度合いを高めてゆく。

 茫然自失の絢菜を力づけるのは個人教師役の能登厦人だった。ちなみに「のといえと」というややこしい名は絢菜は 'not yet' の語呂で覚えている。その能登に勇気づけられ、絢菜は歩き出す。<向かい風が強い。それでも歩きつづける。情熱を力にできるのなら、きっと未来も変えられる>と信じて(110頁)。