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一歩先が見えない不況と限界集落の再生


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鈴木みそ限界集落温泉 1巻』エンターブレイン、2010)

 

 限界集落とは65歳以上の年寄りが村の人口の半分を超えた集落。行政も銭をださないところ。「寝たきり村」に近い。「ギリギリ」村。そこにある廃業同然の温泉旅館が舞台。

 <ろくでなしも悪くない。もうまともにやってたら間に合わない>と呟くゲームプログラマが近くの洞窟で野宿をしていたが、偶然旅館の息子がやって来て、温泉へと誘う。

 <やだ! 圏外だとネット入れないじゃない! ツイッターで最後のつぶやきをアプする予定だったのに!>と、死に場所を求めて秘境にやってきたコスプレのメイド、アユ。いや、レイヤー。レイヤーってなんだ? 〔「コスプレイヤー」の略の俗語らしい。変なところで切る。〕

 <遠くでかわずが鳴く。木々のざわめき。川のせせらぎに癒される。文明の電子機器のない空間。>とプログラマ。<実に皮肉なことに、こここそが都会人が求めてやまない本物のくつろぎの宿じゃないかな。なにしろ都会はキャンベルのミネストローネの具より人が多いんだ。ケータイ持って逃げられる場所といえば圏外か便所だけ。>

 立ち退きを迫られる温泉旅館の起死回生の策をプログラマが考える。たまたま、アユを救わねばとやってきた多士済々のファンたちの才能を利用して、村おこしのイベントをやることを思いつく。

 プログラマや漫画家、モデラーなどなど、少し前には羽振りのよかった人たちも今は不況で食い詰めている。その面々と、売れなかったアイドル(アユ)と、限界集落。意外な組合せだが、そこから現代の世相が逆照射され、考えさせられる。

 漫画家の赤松健は「小説の『Gene Mapper』と、漫画の『限界集落(ギリギリ)温泉』の後に続く作品(作家)が重要だよね。」と述べた。両者とも鋭く現代を抉り、近未来への興味深い視角を提出する。確かに、これらのあとにどんな作品が出てくるかが、これからの問題だ。どちらにも共通するのはネット、あるいはネットが切れた状態だ。あるいは、ひろくいって「電子機器のない」世界だ。これはひとつのキーかもしれない。ネットやコンピュータによる解決や思考は現代では避けがたいようにも見えるが、近未来においては、それを外した条件下も場面の一つに加える必要がある。

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