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アイルランド伝統音楽のギター弾きに4種類あり


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 スレッド 'The Guitar and Irish Traditional Music' から(2002-2005)。thesession.org に発し、Mudcat にまで飛び火した、ギターとアイルランド伝統音楽をめぐる議論。Michael Sands さんの観察によると、アイルランド伝統音楽のセッション現場で出会うギタリストには4種類ある。

  1. 基本的にはシンガーで、ギターで歌の伴奏を附ける人たち (器楽中心のセッションの合間で息抜きのように聞かれ、それ自体は問題ない。問題になるのは、彼らが〔手持ち無沙汰のあまり〕セッションに伴奏を附けだしたとき。往々にして、歌で使うようなコードはセッション・チューンには全然合わず、タイミングも悪く、音もでかすぎる。チューンがどういう音楽か分かっていない。ミュージシャンたちは止めてほしいと思っているが、礼儀上何も言わず、事態は一向によくならない。 → これはぼくも目撃したことがある。セッションではなく、コンサートであったが。かのフィドルの名手トミー・ピープルズの伴奏を恐らく厭々引受けたイアン・スミスが可哀想にこの役回りとなってしまっていた。)
  2. シンガーで歌の伴奏をギターで附けるが、DADGAD を知っているような人たち (かなり音楽がよく分っており、ギターの奏法の改良に余念がない。チューンの伴奏もうまく、セッション・ミュージシャンの尊敬も勝ち得ている。アイルランド音楽にギターのカムバックをもたらした開拓者。)
  3. 基本的には伴奏に専念し、たまには歌う人たち (あこがれのヒーロー〔Dick Gaughan や Paul Brady〕がいて、そのコピーをするが、独自のギター・スタイルを開発することもある。セッションにドライヴ感を与える。中には好きなスタイルに固執する場合もある。)
  4. 完全に伴奏に専念する人たち (Arty McGlynn 派と Steve Cooney 派とに分かれる。前者は抑え目のプレーが身上で、かき鳴らすタイミングは絶妙。ベース・ランを使う。後者は弾けるようなプレーが身上。爆発力があるが、曲が第一と知っており、分を弁える。パワーの源はネック、オクターヴ、カポに対する知識と強力な右手のストローク。ナイロン弦を使用。セッションに寄与すると思えば、ブルーズでもフラメンコでもジャズでも応用する。)

 ああ、あの人はこのタイプだなとか、さまざまに思い当たる。3のタイプはぼくはあまり見たことはない。で、議論はこのあと、実際のセッションの現場に移ってゆくのである。

 ぼくはこれ以外に、別のタイプがあると思う。シンガーの伴奏を附けるのが絶妙にうまく、チューンの伴奏においても創造性を発揮するタイプである。いま思い浮かべているのはドーナル・ラニーである。彼はもちろんブズーキやバウロンも抜群だが、そのギターの味は、壺にはまれば類稀な高揚をもたらすほどのものだ。つまり、みずからは殆ど歌わない2と、4とが、合わさったようなタイプである。