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マンガ古書が登場し、一気に白熱


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三上延ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常』メディアワークス文庫、2011)

 

 ビブリア古書堂シリーズの第2作。古書店の女性店主、篠川栞子が本にまつわるミステリを解明かす。語り手は同店につとめる、「本が読めない」体質の「俺」、五浦大輔。3話をおさめる。

 第1話はアントニイ・バージェス時計じかけのオレンジ』(ハヤカワ文庫NV)。ユダヤ系米国人スタンリ・クーブリク(キューブリック)による映画が準拠することで有名なアメリカ版の同書が、原作の最終章を欠いていることを基にして、中学生の書いた読書感想文の謎解きが始まる。

 第2話は福田定一名言随筆 サラリーマン』(六月社)。大輔の高校の同級生、高坂晶穂の父が遺した蔵書をビブリア古書堂が買取ることになる。栞子と大輔が晶穂の実家で蔵書の査定に取掛かる前に、晶穂の姉から、蔵書の中に一冊、何十万円もの価値がある本があるらしいと、注意される。ところが、査定を終えても、数万円程度の本はあるが、何十万円もする本は見当たらない。どうなっているのか。ここから栞子の謎解きが始まる。故人が司馬遼太郎を愛読したことは何か関係するのか。読ませる。

 第3話は足塚不二雄『UTOPIA 最後の世界大戦』(鶴書房)。段ボール箱に入れた古書を売りに来たのに、査定を頼んだまま姿を消した不可解な男から、古書マンガ『最後の世界大戦』をめぐる謎が始まる。栞子は買い取り票に書かれた途中までの住所だけの情報をたよりに、売りに来た男の家を突き止める。男は待っていた。謎は栞子の母にもかかわるものらしい。暗い影をただよわせつつ、幻のマンガをめぐるドラマが解きほぐされてゆく。

 本書についてのインタビューで、著者は絶版文庫の面白さについてこう語る。

ハードカバーでは出版されていない変わった本が、世に出ることがあるんですよ。第1弾でも紹介しましたが「サンリオSF文庫」なんかだと、ちょっと毛色の違うフランスあたりのSF小説とか幻想文学が結構出版されてたり。あと、旧字体で読みたいと思うと古いものを探さざるをえないんですよ。最近復刊された本だと旧字体が現代仮名づかいに修正されてるものが多いので。出版された当時の息吹が伝わってくるようなあの旧字体の読みづらさがたまらなくいいんですよね(笑)。

 実物にふれないと判らない書誌情報が大きい。本書では在庫管理のためのスリップまで謎解きに利用される。

 あとがきで著者は〈物語はようやく本編というところです。〉と述べる。ますます面白くなりそうな予感がただよう。