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Give Us a Drink of Water (Si-Folk)


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Si-Folk, Clear Spot Session: Traditional Irish Music (2002)

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 世界広しと言えど、こんな解釈の演奏が出来るのは日本のシ・フォーク(Si-Folk)だけではないか。彼らのアルバム Clear Spot Session: Traditional Irish Music (rec. 2001-2002) のトラック 7 に収められている 'Give Us a Drink of Water' の演奏には驚く。よくもこういう編曲を思いついたなあと、感心するのである。恐らくは、赤澤さんのアイディアだろう。素晴らしい。マーティン・ヘイズもぶっ飛ぶのではないか。

 この演奏法が生まれた経緯を想像してみる。長い年月にわたって演奏してきた曲が演奏者の中で熟成される間に、自然にこういう演奏が生まれたのか。それとも、ある日、ふと浮かんだのか。

 ぼくの経験では、後者じゃないかと思う。ある日、自分でも驚くくらいの新鮮な弾き方が浮かぶ。で、それを早速弾いてみる。いいじゃないか。弾けば弾くほど、気に入ってくる。これは何とかして、いつも演奏しているレパートリーの一部にでも組込みたい。できないものか。いや、できる。イントロに使えばどうだ。お、いけるぞ。……こんな感じではないかと想像する。そこへ吉田さんのボックスが加わり、完全にシ・フォーク色に染まる。これに原口さんも加わってればなあと、思わずにはいられない。

 アイリッシュ・トラディショナルではついぞ感じたことのない、ブリティッシュ・フォーク的な音の深みがそこには加えられている。これは、イングランドスコットランドのギター音楽を長年聴いてきた人でないと分からない感覚的なものであるが。これがアイルランド音楽にごく自然に接合されている。お互いがお互いを尊敬し、和やかに握手している。その柔らかさに驚きを禁じ得ないのである。日本が世界に誇るシ・フォークの傑作。どういう音楽を吸収して生きてきたかという、ミュージシャンその人が類稀な水準の音楽から感じ取れる。大阪の Clear Spot での録音。

 なお、本アルバムは一般には市販されていない。

関連情報

 

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  • Si-Folk, Longing Time

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