月9になった古書ミステリー
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三上延『ビブリア古書堂の事件手帖~栞子さんと奇妙な客人たち~ 』(アスキー・メディアワークス 、2011)
2002年に『ダーク・バイオレッツ』でデビューした三上延(みかみえん)の最新シリーズ「ビブリア古書堂シリーズ」の第1巻。古書ミステリーである。4点の古書をめぐり展開する謎を解くのは、北鎌倉にある古書店「ビブリア古書堂」の店長、篠川栞子(しのかわしおりこ)。
4点の古書は夏目漱石『漱石全集・新書版』(岩波書店)、小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫)、ヴィノグラードフ・クジミン『論理学入門』(青木文庫)、太宰治『晩年』(砂子屋書房)。それぞれにまつわる話は独立して読めるようにも工夫された中篇であるが、全体として連作長篇として読める。
語り手は23歳の五浦大輔(ごうらだいすけ)。幼少時の体験がもとで本が読めない「体質」である。この大輔像にはかすかに著者のエコーが感じられる。著者は二三歳の頃から「人に薦められた本が読めない」という癖があったという。
古書好き、本好きには興味がつきない内容が豊富に織込まれており、大輔と、少し年上の栞子をめぐるロマンス的要素、二人をめぐる暗い謎がうまくバランスをとって、軽快に進んでゆくミステリーである。
フジテレビ系列月曜9時枠(月9)の連続ドラマ「ビブリア古書堂の事件手帖」として2013年1月14日から放送された。
〔ガレキディーラー3x3x3さん製作の栞子フィギュア(2012年のワンフェス出品)〔著者ツイッター〕〕