「七」と「化」の二篇の怪異譚
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葉山透『0能者ミナト(7)』(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス、2014)
0能者ミナト・シリーズの第7巻。
主人公・ミナトは怪異退治の専門家としては変わっている。零能者なのだ。つまり、霊感ゼロ。
しかし、ミナトが代わりに備えるのが、思考力。ここが通常の怪異退治の専門家と違う。ただ、仕事にあたっては、霊感を備えた能力者である子供二人を助手として使い、怪異の気配を察知するセンサーの任に当たらせる。
以上さえ分かれば、本書をいきなり読んでも楽しめる。シリーズの既刊を必ずしも読んでいなくても大丈夫だ。
第一話「七」は七人ミサキと呼ばれる怪異を退治する話。日本各地にこの種の集団亡霊の話が実際にあるし、民俗学者・柳田国男に「みさき神考」という論考もある。「みさき」とは変死した人の霊魂のこと。みさきがみとも言う。柳田は「この方面でいふところのミサキはーー略ーー主として、人間の非業の死を遂げて、祀り手もないやうな凶魂を意味する」と書く。
この七人ミサキに狙われた女性からの依頼で、ミナトらはチームを組んで女性を守ろうとするがーー。
ミナトが持ち出す素数ゼミと七人ミサキとの関連はいかに。
第二話「化」は郵便配達員の目の前で、時計台の鐘の音と同時に、村人三百九名が全員消えてしまった事件の話。
時計の付喪神(つくもがみ)という珍しい怪異が出てくる。付喪神とは古い物に宿る霊の謂だが、この場合、つくのが時計なので時間旅行というSFみたいな面が出てくる。
果たして、村人消失の謎は解けるのか。
ミナトの思考の冴えと怪異との対決が読みどころ。痛快な怪異譚。