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人は怪異を恐れる。だが、怪異は九条湊を恐れる――高校生時代の湊を描く葉山透の『0能者ミナト』シリーズ第6作


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葉山透『0能者ミナト (6)』アスキー・メディアワークス、2013)

 

【第1話】首

 高校生時代の九条湊と水谷理彩子の出会い。それは奇怪な惨殺事件の現場だった。ある寒村で湊のアルバイト先の先輩浅野友哉が納屋で首を鉈で切られて死んでいる。かたわらには頭部を切断された子牛と、額を鉈のようなもので割られて死んでいる母牛。湊の冷徹な頭脳と、怪異として調査する理彩子(御蔭神道から派遣されている)とが真相に迫ってゆく。

 湊と理彩子、それに小野寺警部の三者が捜査の中でかわす会話が興趣深い。その後の湊と理彩子が怪異事件でからむことを考えると、すでに高校生時代に二人にこんな出会いがあったと知ることは純粋におもしろい。1話の長さは百頁足らずで、テンポよく進み、読みやすい。

 この事件にからむのは件(くだん)という人頭牛体の不幸の予言をする怪異。件が予言した出来事は絶対当たると言われる。「件」の字がそのまま人面牛身のこの怪異を表すが、国際日本文化研究センターの怪異・妖怪データベースには全国のクダンのデータが16件集められている。

【第2話】件

 第1話から十年後の現在。事務所で新聞のお悔やみ欄を読んでいた湊は突然ダークスーツに着替えて出かける。交通事故で死亡した小野寺警部の自宅での通夜に出席するためだ。

 会場で湊は理彩子に出会う。理彩子は事故の日に小野寺から湊に連絡を取りたいという電話がかかっていた。出張で不在だった理彩子は帰ってから電話のことを知り、かけなおすが事故で亡くなったと聞き、通夜にやってきた。

 湊と理彩子は小野寺の書斎に入って手がかりがないか探す。理彩子が「件」と書かれたファイルを見つける。その最後のページまで見たとき、「九条湊君へ」と書かれた封筒が落ちた。中の便せんを読むと、小野寺が湊に宛てたものだった。それは自分の死の予感のもとにしたためられ、十年前の浅野友哉の事件以来、件の調査を続けてきたこと、その結果、件は不幸の予言をする怪異ではなく、不幸にする予言をする怪異だとの確信に至ったこと、湊にその件の不幸の予言の連鎖を止めてくれと依頼する内容だった。

 湊は小野寺の命をかけた手紙を受けて、件に関する調査を、沙耶とユウキを連れて始める。

 湊はついに件と対面する。件の口からは「九条湊は四つの災いの果て、命を落とすだろう」の言葉が出る。実際、その直後から命の危険にさらされるような災いがつぎつぎに湊を襲う。湊の壮絶な戦いが始まる。

 この件の予言の正体を湊は超複雑性シミュレータとみなすが、「バタフライ・エフェクト」(*)という言葉が実感をもって迫ってくる。そこまで精度の高いシミュレートが果たして可能なのか。この怪異はいったい何なのか。この怪異に対し防ぐ手段はあるのか。 (* 北京でチョウチョが羽ばたいたら、ニューヨークの気候が変わることを表す言葉。)

 件が湊を狙う本当のわけは? 理彩子は怪異のほうが九条湊を恐れているからだと思っている。真相はいかに。