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何千年もこの世を見続けた者は見る者を戦慄させる双眸を持つ


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荻原規子『RDG4 レッドデータガール 世界遺産の少女』(角川文庫、2011)

 

承前)秋の学園祭のために生徒会執行部は夏休みを利用し、真響たちの実家がある長野県戸隠で合宿を行うことになった。しかし真夏が、三つ子の一人で今は神霊となった真澄によって、次元の向こうに取り込まれてしまう。泉水子は真夏を救うため、自ら髪をほどき姫神を喚び込んで層を超えようとする。(作者による第3巻の梗概)

 RDG第4巻は冒頭から主人公泉水子(いずみこ)の日記文がつづく。これが象徴するように、泉水子の自己認識の深まりが本書の随所に出てくる。中でも、第3章「顕現」での姫神そのひとの長い独白は、本作の射程の深さを垣間見させる。果たして泉水子姫神とはどういう関係にあるのか。

 姫神はこの千年間を何度も旅していることを明かし、真剣な口調で語る。

千年以上の試みのはてに、もどってきたわたしは世界遺産になっていた。脳と卵巣だけが永久保存された、未来の解析を待つ世界遺産だ。

 こうして何もできなくなった姫神は最後の試みとして、何とかして人類を滅亡から救おうとする。その真剣な姿勢を見て、「姫神の目の奥に、どうして少女と思えない恐ろしいものがあるのか」、少しずつ分ってくるが、それでもまだ謎は巨大で、先が見えない。

 本書は学園祭の戦国イベントの準備過程での生徒会の協議を中心に話が進む。高校生が議論するわけだが、実社会のふつうの会議などと本質的には何ら変わるところがない。ただ、本書では目に見えない動きが言葉による議論を背後から侵食する不気味さが、非日常の雰囲気を作り出している。肝腎の学園祭は次巻に持ち越され、本巻はプロット上は通過点に位置する。が、そのなかで、興味深いものがたくさん浮かび上がってくる。本作は各巻ごとのストーリーのまとまりより、むしろ長篇としての射程の深さに想いをいたしつつ読むほうがおもしろい。

 以下、脱線。陰陽道のことについておもしろいことが書かれている(第2章「護身」)。陰陽師は過去に官僚だった。それは今も生きていて、政界や財界など、国の「権力者が陰でひそかに利用している団体」組織をつくっている。ただし、宗教法人のようには目に見えない。忍者も「国家権力にたよる組織」としてよく似ている。

 という趣旨のことが本書には書かれているが、必ずしもファンタジーだけのことではなくて、類似した話は実際に耳にしたことがある。ある時事問題の専門家(陰謀論者と世間では分類されるかもしれない)の講演で聞いたのだが、国の行政のトップがある関西の神社を定期的にひそかに訪れており、それがきわめて重大なことであるとの話だった。今もそうかどうかは分からないが、ともかくそのような行動は新聞記事になることはない。また、関西の別の神社に党派をこえて有力政治家がひそかに集っているという話を、別のソースから知ったこともある。これらの神社は関西に住む人ならだれでも知っている有名な神社だ。その種の話は活字になったのを見たことはないので、こういうフィクションの形でしか書けないのかもしれない。

 陰陽師とは対照的に山伏は「世間の権力から遠ざかって、山に籠もるもの」だ。

 学園の中での真響(=忍法体術)と高柳(=陰陽道)の争いは、「個人の争いというよりは、組織全体の顧客争い」につながる。よりVIPな顧客を獲得したほうが世界遺産候補に認定されるのだ。

 

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