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高校生の謎解きのおもしろさ


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米澤穂信氷菓(角川文庫、2001)


 米澤 穂信のデビュー作。第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞。現在第5作まで出ている〈古典部〉シリーズの第1作だ。

 語り手の折木奉太郎は神山高校1年生。ある日、海外を旅する姉から廃部寸前の古典部に入部して救えとの命を受け、しかたなく入部するところから一連の謎解きが始まる。だが、折木はみずから物事に積極的に関わるタイプではなく、できることなら省エネ・モードの生き方を続けようとするので、謎解きの才を発揮するのは、やむを得ざる局面に至った場合のみだ。

 古典部には結局四名が入部することになるが、その面々がいづれも個性的。折木が最初に部室に行ったときになぜかそこに閉じ込められていた千反田 えるは名家の令嬢。成績は優秀だが、柔軟さに欠ける。行方不明の叔父がいるが、その存在が本作では鍵になる。福部 里志は折木の親友で、雑学データベース的存在ではあるが、みずからはそのデータをもとに推論したりしない。伊原 摩耶花は福部に思いを寄せており、福部を追って入部する。漫画研究会にも所属する毒舌家。

 この四人がいろんな謎に挑戦するが、最後には折木の推論がみんなを納得させる。少ない資料から見えない補助線を使いつつ推論を組立てる頭脳が本作の面白さの中心。ある命題と別の命題の間の論理構造をとらえるのがうまく、「対偶関係」などの語を日常的に使う。

 以上のようにおもしろい小説の要素はたっぷりそなえてはいるのだが、読後感は必ずしも満足の行くものではない。特に最後の2章およびあとがきでは、作者は読者に謎を投げかけたままでほったらかしであり、自己満足に耽っていると非難されても仕方ない。それが余韻を残して次作への期待をつなぐ役割をしているのならまだしもそうではない。いったいこの結末はどういう意図があり、どういう役割を果たしているのだろう。

 

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