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英語の聖句を見開きで紹介し英語と聖書の知識を涵養


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船戸英夫『英語聖書のことば』(岩波ジュニア新書、1990)

 岩波ジュニア新書の169番(1990)。現時点では「品切重版未定」だから、古書か図書館しか読む方法がないが、良書であるので紹介したい。ジュニア新書のなかには好評を得てか、電子書籍で出ているものもあるが、これはそうなっていない。近年、この分野は需要がないのか。

 題名に「英語聖書」とあるが、もちろん、聖書は英語で書かれたわけではないので、原語から英語に訳された聖書の意だ。ベースとしているのは RSV (Revised Standard Version, 1946-52) という英訳聖書だ。本当のことをいえば、英語や英米文学の勉強のために英語の骨格に組込まれた聖書について知るには欽定訳聖書(AV, KJV; The Authorised Version, 1611)が必須の知識であるが、ジュニア新書の対象読者には荷が重い、古い英語で書かれているのでやむを得ない。

 その英訳聖書から旧約聖書53、新約聖書37のことばを選び出して、日本語訳(日本聖書協会の『口語訳聖書』)を添え、見開き2頁の解説を加えた本だ。著者の船戸英夫(1930-94)は英文学者(イギリス宗教文学)。

 率直に言って、現時点で同種の本を編むならば、英訳のほうも和訳のほうも、現在の標準版を使うであろうから、内容的にもやや古く感じられる面があるのは否めないが、聖句の内容そのものは古びることもなく、解説は今も読むに値する。

 英米文化圏で書かれたものを読んでいると、聖書に由来する語句に遭遇しないケースのほうが珍しい。

 例えば、米国SF作家のロバート・F・ヤングの『ジョナサンと宇宙クジラJonathan and the Space Whale (1962)を読んでいたとする。この話は旧約聖書のヨナ書を連想させるが、それは前提知識があればこそだ。

 本書をひもとくと、'It is better for me to die than to live.' (生きるよりも死ぬ方がましだ.)がヨナ書に由来する句として説明されている。そこを読むと、ヨナ書のあらましはもとより、旧約聖書のなかで、ヨナ書がルツ記やエステル記と並んで完結した短編小説とも見られると書いてある。こうきけば、たとえ聖書に関心がなかった人でも、ひとつ読んでみようかという気になるのではないだろうか。

 やさしい言葉遣いで丁寧に聖書の世界を英語のプリズムを通して語る本だ。先のヨナのことばは、もし聖書知識がなければ、ふつうのことばのように見え、背後に旧約聖書から新約聖書に至る文脈があることなど、思いもよらないだろう。

 

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