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本の未来をつなぐ図書修復家の物語


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紅玉いづきサエズリ図書館のワルツさん 2』星海社、2013)

 

 紅玉いづきの『サエズリ図書館のワルツさん』の待望の第2巻です。

 手に取ってみると、本があることの歓びといえばよいのでしょうか、そんなものがあふれてきます。sime による装画は相変わらず素晴らしく、本文の組み方やしおりのブルーまで、満足がいきます。でも、何より驚かされたのは、帯の色です(グリーン)。書影の画像よりも色調が深みがあり、そばに置いて眺めるだけで笑みがこぼれるほどの味わいがあります。背表紙からは想像もつかない色なので、もし実物を手に取る機会があればぜひご覧ください。

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 第1巻は短編集でしたが、第2巻は中編「サエズリ図書館のチドリさん」と短編「サエズリ図書館のサトミさん」を収めています。

 「チドリさん」は22歳の女子学生、千鳥蓉子が図書修復家を目指して歩む物語です。紙の本が稀少品となり、電子的データがふつうとなった近未来に、本の延命をはかることにどんな意義があるのかと真剣に悩む物語です。

 ワルツさんとも因縁浅からぬ降旗庵治(ふるはたおうじ)は老修復家です。命がけで本の修復に取組んできたたった一人の人物です。その降旗に弟子入りを切望する千鳥は拒絶されます。未来がない本に若者の将来を託すわけにはいかないと。そんな頑固な降旗を前にした千鳥はどうなるのでしょう。

 もし、本に未来がないとすれば。データがあればそれでいいのでしょうか。本は延命させる価値があるのでしょうか。いろいろなことを考えさせる物語です。

 

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